見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

曽田正人の漫画「テンプリズム」1〜8巻

テンプリズム1テンプリズム 2 (ビッグコミックス)テンプリズム3テンプリズム 4 (ビッグコミックス)
テンプリズム5テンプリズム6テンプリズム 7 (ビッグコミックス)テンプリズム 8 (ビッグコミックス)

「昴」「MOON -昴 ソリチュードスタンディング-」を読んだ勢いで、同じ作者による新作「テンプリズム」を読んでみた。
本当は途中で読むのを中断した「capeta」にしたかったのだが、ボリュームがあるので、そちらはしばらく置いてから読むことにした。

「テンプリズム」の内容はベタなヒロイックファンタジーである。そして“恋愛”も物語に大きく絡んでいる。
今までの作品とは趣の違う作品で、読んでいて戸惑った。
主人公は失われた王家の子孫であり、眼帯で隠した片目の下に不思議な力を秘めている少年。
大塚英志が、ライトノベルの賞での応募作に登場するのが「片目の色が違う」主人公ばかりと書いていてからもう久しい。

別に悪いわけではないが、この類の物語で相当に使い古されている身体的特徴を、臆面もなくストレートに使うというのは、作者がこのジャンルに疎いことからきているのかもしれない。
逆に、変な知識がないことがいい方向に作用することもあるので必ずしもそのことは悪いことではないとは思うのだが……
ただ、この物語、ヒーローの活躍と葛藤、成長を描いてはいるのだが、妙に“恋愛”に拘泥しているところもあり、どうにも読んでいて悩ましい。
また、コマ割りが6巻あたりから大ゴマを使うようになっているのも気になる。ウェブ上で連載をしていることからくることなのかもしれないが、本として読むと、個人的には“大味”に感じてしまう。

8巻まで読んだのだが、物語の進行が遅い、話の密度が薄いという点は正直気になった。
キャラクターが魅力的かについては保留としたい。

漫画家として培ったノウハウを使わずに新ジャンルで新しい読者層に挑んだということは興味深いことではあるので、ウェブ上の連載は読んでいこうかとは思う。