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羽海野チカ「3月のライオン」第6巻

第5巻の最後に描かれた「ひなの中学校でのいじめと、ひなの言葉で救われたという零の関係」
が6巻でどうなっていくのかが気になっていた。

ひなのいじめのエピソードは、零の棋士としての成長とは別の流れにある話と思っていた。
ところが、意外な展開だった。
零は、いじめがひどくなりひなが学校に通えなくなってしまったときに休学時に家庭教師を雇う、私立に転校など
ができるように棋士として金を稼ごうと考えるのだ。
ひなへの恩返しとして。

意表をついた展開に驚いた。
零の相談相手である教師の林田が
「この子はズレている……」
と思うのももっともである。

ただ、これは零が将棋というものに意欲的に取り組むきっかけとなる、
さらには、ほかの人のために頑張るという行動につながるものとなっている。

何事にも熱くなることのない零が、がむしゃらになる初めての場面が登場する。
そしてこのズレぶりが、零らしいといえば零らしいのかもしれない。

ともあれ、世界に対して踏み出し、成長していく零の第一歩が描かれた巻なのではないだろうか。

この展開については、零がここまで熱くなることの必然性が弱いのではと感じる人がいるかもしれない。
ただ、これはもう少し先まで読んでみないとわからないような気がする。

零とひなの関係がどうなるのかというのもあるし……

この巻については、私なんかの予想を上回る、意外な展開に驚いた。

あと、この作家のネームの入れ方は
しゃべり言葉、心の声を吹き出しに入れるだけでなく
何パターンかの配置の仕方をしており、
これってかつての少女漫画で色々と試された手法を研究、踏襲してるのでは
などと思った。
心の声をコマとコマの間にも黒地白ヌキで入れる、描き文字で入れるなど
かなり趣向を凝らしている。