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明石政紀「ドイツのロック音楽 またはカン、ファウスト、クラフトワーク」続き。そして自分にとってのクラウト・ロックの魅力とは?

http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110906/1315273596
からの続き。

読了した。
著者の意図としてはこの本はとカン、ファウストクラフトワークを中心にした
架空(著者は“贋”という言葉を使っている)のアルバム・ライナーノーツという体裁を意識して書かれた著作となっているようだ。

著者の文章が妙な形で古めかしく調子っぱずれにユーモラスで、書かれてある内容よりもそっちに気をとられてしまった。
各アルバムの曲を紹介する文章がなんとも珍妙で楽しい。
「スーン・オーバー・ババルーマ」の架空ライナーノーツは以下の感じである。
この人はタイトルの和訳を必ず書く。
P74 「もうすぐババルーマを越えて」は、いわばカンの物理学風似非中南米音楽である。のっけから「目が眩む、目が眩む Dissy Dissy」(340秒)と、骸骨踊りのようなレゲエがスッコン、スッコンと始まる。ドラムスが焼き立てのパンのようなコリコリしたリズムを刻み、ギターが夜鳴き猫のような声を上げ、ヴァイオリンが目眩踊りを奏で、ベースは無愛想に同じ動きを繰り返し、オルガンは規則的に湧き上がってくる水泡となる。パーカッシヴに分節されるカローリ氏の囁きヴォーカルは、ほとんど楽器の一部と化し、決して前面に出てくることはない。どのパートも主役をつとめることはなく、どの音もこちらに迫ってくることもなく、すべての音が細かく絡み合い、細密画のように織り上げられる。〜するとテンポは速まり、「飛翔 Splash」(467秒)となる。変調されたヴァイオリンが冷静に暴れ、ドラムスはその音を細かい粒に砕きながら沈着に駆動し、ギターは精確にしゃっくりし、ピアノのベースはわき目もふらず地固めに専念し、オルガンは上昇しながら上昇せず、熱狂にいたることのない熱狂が繰り広げられる〜」

音楽の音を表現するオノマトペが楽しい。スッコンスッコン、ウンパァ、ウンパッパァ(P99)など若いライターには書けない(恥ずかしくて)愉快な表現が満載だ。
「タゴ・マゴ」のライナーノーツでは
P62 タゴ・マゴとは、もちろん田吾作の孫のことではなく、ある魔術師の名に因むという説とある山の名前に因むという説の2説がある。
という文章も。
これもすごいですね。田吾作の孫! 田吾作は今の若い子には意味がわからないのではないだろうか。

内容についてはもう少し書いて後ほど更新したい。

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そして続き。

著者は自分にとってのドイツ産ロックの魅力は、先の3つのバンドにあったとし、こう書いている。
P39 さて、この3つのバンドの共通項目をまとめてみると
イ.しつこい反復が好き
ロ.機械(ないしは機械的動き)が好き
ハ.「ロック」以外の分野の語彙や文脈を持ち込んだ
ニ.技法があっても技法を見せびらかさない
ホ.歌はあっても歌心はない……
の特徴があるとしている。

さらにその魅力を強引にまとめると
「ズレとユーモアと距離と覚醒」であると語っている。

興味深いことは細々とあるのだがこの著作についてはここまで。

ドイツのロック音楽―またはカン、ファウスト、クラフトワーク

ドイツのロック音楽―またはカン、ファウスト、クラフトワーク

この本を読んで改めて思ったのは自分がなぜクラウト・ロックと呼ばれる音楽をずっと好きだったのかということだった。
そのあたりつらつらと書いてみる。

初めて知ったのが、タンジェリン・ドリーム
アルバム「Atem 荒涼たる明るさの中で」だったと思う。
当時の曲の邦題がすごかった。ネットで確認したところ
1. 荒涼たる明るさの中で Atem
2. 牧羊神に捧げて Fauni-Gena
3. 万物変化し、輪廻転生す Circulation of Events
4. 幻視 Wahn
である。LPのジャケットはこれ。
アテム
トラウマになりそうなジャケ写だ。
'70年代、中学時代にこれを聴いていたのだから、今にして思うと精神形成上あまりいい影響を受けていなかったような気がする。
さらに、ライナーノーツには高橋巌と間章の対談が載っていたと記憶する。
その上、舞踏家の笠井叡によるオイリュトミーの公演のチラシなどが入っていたような気もする。
正直、あまりに内省的な音楽に、聴いていて心地よくもあるが非常に気が滅入ったことを覚えている。
その後、曲調が聴きやすくなってからは2枚組ライブ盤「アンコール」などは割とよく聴いた。
アンコール(アメリカン・ツアー1977)(紙ジャケット仕様)
アメリカの星条旗をバックにした、あざといくらい音楽性の変化を示したジャケ写ではある。

ただ、
高橋巌、間章の2人の書いた文はチェックするようになったが
タンジェリン・ドリームは次第に聴かなくなった。

そんなこんなで聴いたのがファウストのファーストアルバムだったと思う。

記憶は定かではないのだが、西新宿にあったハードロック系の輸入レコード店キニーで非常に安く売っていたのを買ったのではないかと思う。
それからクラウト・ロックにはまるようになったのだ。

書いていたのだが、着地点が見えないのでこの辺にする。
クラウト・ロックに何故引かれたのかは自分でも明確につかめていないので、また書いていきたい。
明石政紀に通じるところもあるのだが、微妙に違う点もあるような気がするので。

とりあえず、以上。

高橋巌と間章のこの対談は「間章クロニクル 」に掲載されているということをネットで知った。
読んで見ることにする。
結構インスパイアされたというおぼろげな記憶がある。どんなことが書いてあるのかちょっと楽しみだ。

↓以下、後に「間章クロニクル 」を読んだときの感想。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20111003/1317662178