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フラワー・トラベリン・バンド「メイド・イン・ジャパン」

メイド・イン・ジャパン

メイド・イン・ジャパン

カナダ人のプロデューサーによるカナダ録音の3枚目となるアルバム。
'72年に発売されている。
このアルバムは今回生まれて初めて聴いたものだと思う。

1.「イントロダクション」でひずんだ音のエマーソン・レイク&パーマーの「ラッキー・マン」がいきなり流れてきてびっくりした。
このバンドはつくづく私を驚かせてくれる。
これは何だ!と思って聞いていると、ナレーションが入り、
どうやらカナダで行われたEL&P、フラワー、ボブ・シーガーらによるコンサートの告知用ラジオCMらしいということがわかる。
これって正規のアルバム・バージョンなの? とか思ったが、
そのようである。

アルバムにラジオCMが入っていたのなんて、ビーチ・ボーイズの「スマイル」の海賊版を昔に聞いたとき以来ではないか。

これは、フラワーのメンバーからすると屈辱的な内容だ。
縁もゆかりもない有名外国バンド(当時)をネタにして気を引こうしている内容なのだから。
カナダ人プロデューサーからすれば、アジアの名も知れぬバンドのアルバムという認識だったのだろう。
しかもキーボードバンドであるEL&Pとフラワーでは音楽性もぜんぜん違う。
アルバムの構成としてちょっとなんなんだろと思う。
こんなことをしているアルバムに正直期待はできないな、と思った。

とはいえ、何度か聴いたが悪いアルバムではない。
「SATORI」の破天荒な勢いからするとこじんまりとしたが、逆にまとまった内容とも言える。
ジョー山中のボーカルも、ものすごくおおざっぱに言えば、
線の細いロバート・プラントからねちっこいイアン・ギランに変わったという印象。
意外性、面白みは減ったがこなれてきた感じか。


このアルバムをひとことで言えば、
“突出したものを持ちながらも不遇に終わったバンドの屈辱ともいえる象徴的な刻印が1曲目に刻まれたアルバム”といえるのではないだろうか。
また何回か聴くと印象も変わるかもしれないので、その際は書き込むことにする。

個人的には昔はEL&Pは大好きだったのだが、
こんなところで彼らの、しかも「ラッキー・マン」を聞くとは想像もしていなかった……
こんな出会いもジュリアン・コープのおかげか。

変なところで感慨深いものがあった。
エマーソン、レイク&パーマー+2(紙ジャケット仕様)

エマーソン、レイク&パーマー+2(紙ジャケット仕様)

一応、補足すると「ラッキー・マン」はEL&Pのファーストアルバムのラストに収録。
彼らのアルバムに大抵1つは入っていたボーカルのグレッグ・レイクが甘い声で大げさに歌い上げるパターンの曲です。