広瀬隆「FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン」
反原発を代表する作家の広瀬隆が福島原発事故、全国の原発の状況を語っている新書版の本。
今年の5月に出たものだ。
少し間を置いて読んでみた。
色々なことが簡潔、明快に筋道立てて語られている。
非常に理解しやすく、第一人者の書いた説得力のある内容だと感心した。
事故発生後2ヶ月でこれだけのものが書けるのは流石だ。
放射性物質と放射線、体内被曝のこと。
第一部の約100ページを読めば福島原発事故のこと、その影響についての概略が理解できるのではないだろうか。
ただ読んでいて気の滅入ることが多く精神的に少し参った。
著者自身も怒りと絶望のあまり、自身の考えと限定した上で、自暴自棄とも取れるような対応策を述べている。
P105に書かれている著者の考え④を読み、私はかなり気分が暗くなった。
この本の最後に“放射能の危険性もない生活は、とても簡単なものだ”と著者は一応、書いているが、
この本が語られていることは、もうすでに私たちの生活は放射能に汚染されているということだ。
そして、私たちは放射能に汚染された世界で何十年も暮らしていかなければならないのだ。
そして、その放射能の危険は私たちの五感では察知することはできない。
この本で印象に残ったのが、
著者が、
福島原発事故において大惨事に発展した大きな分岐点が電源復旧作業が遅れたこと
だと語っていること。
著者の解説を読むと、電源が確保され冷却システムが働いていればあの水素爆発も防げたのではと思えてくる。
人災ということか……
- 作者: 広瀬隆
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/05/13
- メディア: 新書
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どうでもいいことだが、裏表紙の著者近影は、少し冥王レイリーに似ている気がする。