見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

植草一秀「日本の独立 主権者国民と『米・官・業・政・電』利権複合体の死闘」03

以降、民主党政権以降について語られたことについて。

2009年の自民党から民主党への政権交代を著者は
「日本史上初の民衆革命だった2009年の政権交代」「平成維新」と語り、非常に高く評価している。
“米・官・業・政・電”の悪徳ペンタゴン国民主権が勝利した、
「民衆の民衆による民衆のための政権」を樹立したものであり、平成の無血革命と呼ぶべき偉業だった。(P335)
とまで賞賛している。

そして、こう語る。
P335 平成維新に求められた課題は、
1.対米隷属からの脱却
2.官僚主権構造の破壊
3.政治権力と大資本の癒着排除
4.市場原理主義の経済政策排除
5.警察、検察、裁判所制度の近代化
と、5点を挙げている。

そして具体的方策として
1.沖縄普天間基地移設問題の解決
2.官僚天下りの根絶
3.企業団体献金の前面廃止
4.セーフティネットの整備
5.取調べ過程の前面可視化
の実現を挙げている。


そして、著者は鳩山政権後の管政権は
平成維新を逆行させる流れととらえ、否定的に語っている。
管首相の「最小不幸社会」の言葉に対しては「不幸根絶」とすべきと主張している。

さらに、テレビに登場してセーフティネットを強く否定する金美麗についてかなりきつい言葉で否定している。
この著者の言葉を読むと
著者の理念、理想というものが見えてくる。
著者に理想家の学者的な面があることがよくわかる。
今後取り組む課題の一つとして“市場原理主義の経済政策排除”を挙げているくらいなのだから。そこまで極端に言うかという感じだ。
ケインジリアンであることを著者は否定しているそうだが、立ち位置としては明らかにそちらにいる学者と思う。
小泉竹中政権を嫌ったのも当然である。
ただ、私は著者のこのあたりの理想を抱く立ち位置には好感を抱いた。
国民主権”、これが著者が強く抱く理念である。

続いて著者は小沢一郎についてかなりの分量を使って語っている。
著者は小沢を対米隷属構造を変化させる意思をもつ強い政治家と語り、“小沢を陥れた”検察を強く非難している。
検察の癒着構造などの指摘はなるほどと思えるものもあるのだが、私自身は小沢一郎に対してここまで強く擁護する著者に共感はできなかった。

以上でこの本についてのメモを終える。
メモを書くのに疲れたので。


※興味深かった記述
・9.11同時テロへの疑惑
謀略本では“アメリカの陰謀”と語られるこの事件について、著者は留保つきだが、大いに怪しい点があると語っている。これはなかなか言えないことである。著者は謀略本の大御所と称されることもある副島隆彦をかなり高く評価しており、あとがきでは「本書のデザインは尊敬する副島隆彦氏の著作『日本の秘密』に倣わせていただいた」とまで書いている。
そんなこともあり、著者・植草一秀の言説は若干、謀略説に流れることが目立つ気もする。もしかすれば、そう思う私がマス・メディアにマインド・コントロールされているのかもしれないが。
非常に下世話な面白がりでいうと、自らの不祥事が冤罪であると謀略説を立て、アメリカの陰謀まで連なるとする説は、
“痴漢行為”が“アメリカの陰謀”に連なるとする壮大な珍説と見立てることもでき、ある種痛快ではある。
ただ、理念に基づきこれだけのものを書く著者に対してそんな面白がりを書くのは失礼というものだと、この本を読んで痛感した。
個人的嗜好はそれぞれあるものだ。人に迷惑をかけなければ、それは決して非難されるべきものではないと思う。

・政府から評論家に払われた“お金”について
野中広務が小渕政権を支えた官房長官時代に、先例にならって複数の評論家に機密費から盆暮れに数百万円を届けていたこと。その後、三宅久之は受け取ったことを認めたことが語られている(P481)。
2010年8月号の文藝春秋で、野中は立花隆との対談の際、金を届けてそれを断ったのは田原総一郎だけだったと語っている。
ちなみにこの対談で野中は小沢を“悪魔”と語り、自分の死後に小沢の悪行を記録した文章を発表すると語っている。野中のような海千山千で懐の深い人物にすら“悪魔”と語られているのだ。しかも野中は小沢の人間的な大きさ・魅力は認めていない。ここからも小沢は信用できそうにない人物と思われるのだが……

日本の独立

日本の独立