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佐藤優+魚住昭責任編集「誰が日本を支配するのか!?政治とメディア」

“闇の支配者”“陰謀論”から始まって、ベンジャミン・フルフォード植草一秀著作を読み、
タイトルにある“日本を支配”というキーワード、植草の原稿もあることから
この本を読んでみた。
読んだ感想は何とも中途半端な内容という印象だ。
→と書いて、後で知ったのだが、これはシリーズの一つ“政治・メディア編”なのですね。
それで中途半端なのか。シリーズ全部を読めばまた変わるのかも。


先日読んだ植草の著作「日本の独立 主権者国民と『米・官・業・政・電』利権複合体の死闘」後なので、というのもあるが。
あちらはボリュームはあったが、ともかく“主権国民”視点からしっかりと日本の政治のありかたを多方面から語っていたので、あちらから比べるとこちらは大仰なタイトルだが肩透かしな感は否めなかった。

この本の構成としては
佐藤優+魚住昭責任編集ということで
1.佐藤優魚住昭の対談「日本の政治はどこへ行くのか?」
2.魚住昭と新聞社匿名政治部記者の対談「「鳩山政権後、菅内閣誕生の舞台裏」
3.青木理政権交代でメディアは変わったのか」
4.植草一秀最小不幸社会」の政治経済学
の4つの章から成り立っている。

そもそも私は佐藤、魚住が共同責任編集をしていることの意義とかも把握していない人間なのだが、とりあえず章ごとに感想を書く。

1.佐藤優魚住昭の対談「日本の政治はどこへ行くのか?」
佐藤という人はおそらく新興宗教の教祖にでもなればかなり人気が出るのではないか。
語っていることは対談でもあるので仕方ないが、かなりぶれてる点もあるように思える。
論旨としてはどうなのだろうみたいな印象もある。
ただ、語る言葉が非常に唐突かつ、インパクトのあるものが多い。
いわゆる人を煙に巻くしゃべりについては天才的な人なのではと思われる。
なんかお告げを聞いてる気分になりますね、この語り口。
魚住という人もそういうスタンスで拝聴してますね。
とはいえ面白いことを言っていることは確かだ。

2.魚住昭と新聞社匿名政治部記者の対談「「鳩山政権後、菅内閣誕生の舞台裏」
ここに登場する匿名の政治部記者の方、政治部なのに政治家の考えや行動について伝聞・推測が多いので驚いた。
記者なんだからぐずくずに語らず明快に話してほしい。
小沢一郎についてもあいまいにお茶を濁す。
匿名なのだから思い切りよく話してほしい。
とはいえ、佐藤優まで行くとご託宣になってしまうので行き過ぎだが。そしてあれが受け入れられるにはセンスが必要だろう。
普天間基地の問題についての言葉も立ち居地をはっきりさせず、当事者意識に欠けているように思えたのは偏見だろうか。

3.青木理政権交代でメディアは変わったのか」
私は新聞記者という仕事に対してまったく思い入れはない。
むしろネガティブな印象すら抱いているので、共同通信の社会部記者だったというこの人の語る新聞記者への“熱い思い”については正直ピンとこなかった。
リクルート事件のスクープをした朝日新聞の記者への賞賛と特捜検察の'90年以降の“暴走”、官僚に追随する新聞社について語っている。
興味深かった文章がひとつあった。
2007年6月、元公安調査丁長官の緒形重威氏が詐欺容疑で東京地検特捜部に逮捕された事件のことだ。
ここでは事件の内容については書かない。
この事件、緒形氏が行った行為に対して、当時の安倍政権が激しい憤りを露にしたことで無理やり作られた詐欺事件だったとのことだ。
当時は緒形氏が悪人的に報道されそれっきりだったので、変な事件だと気になっていた。この原稿を読んで納得がいった。

4.植草一秀最小不幸社会」の政治経済学
1.2.のグズグズな内容が目立つこの本の中では燦然と原稿が輝いている印象。
ただ「日本の独立 主権者国民と『米・官・業・政・電』利権複合体の死闘」のダイジェストです。
読んだ感想は以下に書いた。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20111003/1317613242


この本、結局印象に残ったのは、冒頭の対談における佐藤優による唐突感あふれる“託宣”だけだった。
メモを残しておかないと1ヶ月後には内容を完全に忘れていると思われる書籍。
→これを書いた後で、シリーズのひとつと知ったが、シリーズのほかのものも今のところ読もうとは思わない。ほかに読みたいものがあるので。

誰が日本を支配するのか!?政治とメディアの巻

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