見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

副島隆彦「世界権力者人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち」

世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち

世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち

この本、ちょっと前に読んだベンジャミン・フルフォード「図解 世界『闇の支配者』」と作りが酷似している。
扱うネタが世界の知られざる支配者で、同じ版形、カラー図版満載のオール4Cという図鑑的体裁がそっくりだ。
発行年月日を見ると「世界権力者人物図鑑」のほうが半年ほど前だ。1ヶ月後に第2刷が発行されているのでそれなりのヒットだったと思われる。
とすると「世界『闇の支配者』」は、後追い企画で作られたのかもしれない。

両者を比較すると今回読んだ「世界権力者人物図鑑」の方が明らかに読み応えもあり、論旨もきちんとしている。
極論はあるのだが、図鑑体裁でいながら、読み進めると一つの世界観が浮かび上がり、興味深く読めた。書かれていることも、説得力のある言説もあり、新聞を読んでいるだけではわからない別の局面を指摘しており、ためになった。
こちらから比べると「世界『闇の支配者』」は“謀略本”のトンデモ本指数が高いように思われる。
感想は↓
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110925/1316919805

この本は5章、そして見開きで構成される全53項からなる“図鑑”だ。
53項目について列挙するのは大変なので省くが、それぞれの項目はコンパクトにまとまっていながらほかの項目との補完関係もよくできている印象。
章については以下の5章となっている。

                                                                                                                        • -

第1章 世界権力の頂点 世界帝国アメリカを支配している者たち
第2章 ドル覇権の崩壊 ドル崩壊に直面する金融・財界人
第3章 欧州とBRICs アメリカに処分案をつきつける指導者たち
第4章 米国保守とネオコン 激しく闘ってきたポピュリストとグローバリスト
第5章 日本操り対策班 属国・日本を狙い撃ちする帝国の手先ら

                                                                                                                          • -

色々興味深いことが語られているのだが、細かい部分は省いてざっと読んだ印象をメモにすると以下のようになる。

この本で著者が支配者の筆頭として挙げているのが“真の世界皇帝”デイヴィッド・ロックフェラー、そしてロックフェラー一族。
ロスチャイルド一族への言及もあるが、基本ロックフェラー一族を軸に世界の支配構造を解説。だが、その支配構造もアメリカ・ドルの凋落で破綻をきたし始めていると語っている。

全体として金融政策に関しての記述が多い印象。登場する歴代の米国金融担当者たちへの論評は非常に興味深く読んだ。

米国、ドルの凋落を予想し、BRICs、特に中国が次の覇権国になることを著者は断言している。

中国の政治家を善人・悪人に分け、
善人として訒小平胡錦濤温家宝を挙げている。

プーチン、メドヴェージェフの独裁体制にあるロシアについてはネオ・コーポラティズムNeo-Corporatismという言葉を使ってそれなりに評価している。

グローバリズム(地球支配主義者)とポピュリズム(アメリカ民衆主義者)という言葉でアメリカ政治思想の潮流を語っている。
もちろん著者はグローバリズムは×で、ポピュリズムに○をしている。
ここは権力者図鑑という趣旨からは若干外れるが、面白く読んだ。
9.11以前に日経新聞やネットとかでよく“グローバルスタンダード”と言う言葉が使われていた記憶がある。
当時は私もそういうものが正しいと信奉していた。今となってはなんでそんなことを思っていたのかという感じだ。
ウィキペディアによると“グローバルスタンダード”とは以下のリンクに書かれているようなもの
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%AB%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9


“第5章 日本操り対策班”では
支配者の日本人の手下を名前を挙げて列挙しているのに驚いた。
中川昭一朦朧会見を仕組んだ米国人の手先となった官吏、記者の名前
朝日新聞を堕落させた張本人の名前
小沢一郎攻撃を仕掛けた官吏。検察、裁判官の名前
・アメリカの子分となっている民主党政治家の名前
竹中平蔵については子分であるのは自明ということなのか、竹中のバックにいた米国人の素性
これらを写真つきで紹介している。

突っ込みどころ、極端な見解はあるのだが、この本は家に置き、気になる事件があったときに開いて参照すると事件を推測するヒントになる面白い“図鑑”かもしれない。
なかなかいい本だと思う。
でも、もちろん鵜呑みする気はありません。