見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

都築饗一「バブルの肖像」

非常に楽しく読めた。
週刊朝日に2004年から1年間連載された「バブルの肖像」を単行本化したもの。
取り上げている項目は以下の通り。

興味深いこと満載なのだが、個人的に特に面白かった項目、部分について思ったことを以下に書く。

ゴールドタワー 
'88年竣工。当時は世界のトイレ館なる展示施設があり、そこには純金26キロ時価6000万円の「黄金のトイレ」が展示されていた。
現在は子供向け施設になっている。展望台に黄金のトイレがまだあるかは知りません。
→もう置かれててないようです。
http://www.goldtower.co.jp/

料亭「恵川」
大王製紙の井川意高前会長の100億ギャンブル融資(?)に驚いたが、思い起こせばバブル期はもっとすごかった。
当時は一介の料亭の女将が、「この女将の言った株が上る」という占いが当るということだけで、累計総額2兆7600億円が融資されていたのだ。1回の株商いで最高400億をぶち込んだという。
巨額の株商いは今では珍しくないが、この人のすごいのはその後流行った金融工学とか関係なしにギャンブル的に金を株につぎ込んでいたということだ。こんなのもうあり得ないですね。

金塊
竹下総理は'88年から「ふるさと創生」と称して各市町村に1億円を交付した。これも今では信じられないような施策だが、その影響で各地にさまざまな展示場、テーマパークが生まれた。そのわかりやすい例がこれ。
一億円の金塊を購入して、それを展示したのだ。意外なことに展示は好評で350万人以上の人が訪れ、W杯時にはデビッド・ベッカムも訪問、金塊をすりすりしている写真が撮られ、展示されていたという。
金塊は昨年、市の財政のため売却され、現在はレプリカが展示されているという。
※市のサイトでは「金塊は金属メーカーに返還」という表現になっている。そちらが正しいようです。
http://www.city.awaji.hyogo.jp/awaji-t/gu/gu_01_04.php?foreaction=5&contcd=2005030142¶m_val=008002007000

高橋治則氏(イ・アイ・イーインターナショナル社長)
この人、不動産買い付けの際、自家用ジェットで世界を飛び回り、そこにしばしば政治家や官僚も同乗してその後、癒着振りが話題になったそうだ。
バブルがはじけた後にもろもろの背任容疑などで逮捕されて収監されたのだが、国会の証人喚問に呼ばれた際、
勢い込んだ海江田万里衆議院議員から、ケッサクな質問があったという。

「容疑者を同乗させたときに彼らは飛行機代は払ったか?」
だそうだ。
おもわず苦笑してしまう質問だ。海江田議員のキャラが見えてくる質問ではあるなーと妙に納得してしまった。

F1スポンサー
「振り返ってみればF1ブームとバブルは見事に重なる運命共同体だった」という言葉が的確すぎる。まさにバブルなエピソードが満載だった。

バニング
バニング”というのはボックスカーの内装をスナックのように改装すること。これはヤンキーの心と通じるものがある現象だった。

くまもとアートポリス
著者によるとバブルの残した貴重な遺産は九州に多いという。ハウステンボス、シーガイア、そして熊本では当時の知事・細川護熙の元、'88年に“くまもとアートポリスプロジェクト”がスタートした。そして現在も続いている。
確かに写真をみると面白い建物オブジェが熊本には多数存在するようだ。
これはなかなかいいですね。
http://www.pref.kumamoto.jp/site/artpolis/
しかし熊本北警察署は地震のとき大丈夫なのだろうか。
http://www.pref.kumamoto.jp/traffic/artpolis/links/001.html


ホテル川久
すごいホテルだ。
300億円を費やしたという建物は全室スイートの89室。中国・紫禁城と同じ瓦、フランス、イタリアの職人が仕上げた内装、家具は全てヨーロッパから取り寄せたなど、超一級の本格派そのもののつくりだ。
当初は会員か会員紹介しか宿泊できないシステムで、個人会員が一口2000万円、法人会員は6000万円という破格の料金設定だったという。
それが現在、88室(なぜか一つ減っている)2万〜3万で宿泊できるというのだ。
これは、老朽化する前に一度行ってみたいところだ。
これぞバブルの恩恵でしょう。
http://www.hotel-kawakyu.jp/

10万円金貨
こんなものが存在していたこと、すっかり忘れていた。
当時大蔵省で10万円金貨発行の責任者を務めていたのは、あの“ミスター円榊原英資だっというのが妙に面白い。

ギーガー・バー
ギーガー・バーはかつてスイス、日本とアメリカにかつてあったそうだ。
現在は本家のスイスにしかない。
ギーガーの公式サイトでは本人が日本版ギーガー・バーを作りたくなかったと語っている。
冒頭から
“The Giger-Bar in Tokyo was actually created against my will.”である。
この文によるとバーはその後、Yakuzaの溜まり場になっていたらしい、とか書かれてある。
個人的にはバーよりも公式サイトを見てそこにFURNITUREのコーナーがあり
ギーガーデザインによる恐ろしげな椅子や家具が売られているのに驚いた。
自分がもし大富豪だったら、一部屋くらいギーガールームを作ってみたいものだ。
http://www.hrgiger.com/frame.htm
ギーガーグッズで何かないかとアマゾンを見たら“ギーガー孫の手”などというものがあった。

H.R.ギーガー ギーガー孫の手(ギーガー模様)

H.R.ギーガー ギーガー孫の手(ギーガー模様)

何か小さい置物とかあれば欲しいのだが……

柏崎トルコ文化村
バブルは日本各地に奇妙なテーマパークを生んだが、著者によると柏崎トルコ文化村のコンセプトは突出していたという。
「なぜ新潟県の浜辺にトルコかと言えば『ボスポラス海峡に面したイスタンブールは、日本海佐渡島を望む柏崎の風景と共通するものがある』からだという……」(P133)
風景で共通するもの……。何の根拠にもなっていない……。確かにここまで説得力に欠けるコンセプトはそうそうないでしょう。

斎藤澪奈子
この名前、20代の人は知らないのでは……

横井英樹と中原キイチ
横井英樹とその愛人の娘中原キイ子がバブル期にフランスのシャトー、アメリカのエンパイアステートビルを購入した経緯が書かれている。
多摩霊園にある横井の墓は地上と地下の2階建てで、螺旋階段で下りた地下の納骨堂には絨毯が敷き詰められているという。2000年には債権者の要請で墓の中に金が隠されていないか調べられたが、どこにも見つからなかったそうだ。

エンパイアステートビル」買収についてはウォールストリートジャーナルの記者が書いた「エンパイア」という本が出ているそうで、著者が勧めている。いつか読んでみよう。

この本、今読むと書かれた時代から微妙に年月を経ているのがまた味わい深かった。

バブルの肖像

バブルの肖像

エンパイア

エンパイア

上記の表紙を見てウィルコの「ヤンキー・ホテル・フォックストロット」を思い出した。
どうでもいいことだが……

ヤンキー・ホテル・フォックストロット

ヤンキー・ホテル・フォックストロット