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ポール・サイモン「ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット」

ブライアン・イーノと絡んで作り上げた前作の「サプライズ」も素晴らしかったが、
今回のアルバムは、本来のポール・サイモンらしさが出た、前作を上回る出来のアルバムなのではないだろうか。
彼の長いキャリアでもトップレベルにあるアルバムに思える。

聴けばきくほどそのよさがしみわたるように伝わってくる。
粒だった音はキラキラと光を放っているようだ。
歌詞カードを見て、和訳を見て歌を聴けばさらにそのよさがわかってくる。
言葉の響き、韻の踏み方など言うまでもないが、最高だ。

ポール・サイモンはこの10月13日で70歳になったそうだ。
日本の音楽好きの間ではボブ・ディランばかり誉めそやされるような気がするが、
この人はもっと評価されていいと思う。
ディランが天才とするなら、ポール・サイモンはとてつもない才人だ。そしてその好奇心は衰えることがない。

日本の音楽雑誌で大きく取り上げられないのは、多分「グレイス・ランド」「リズム・オブ・ザ・セインツ」発表時に、
エスニック・ビートの略奪だとか中村とうよう渋谷陽一らに酷評されたことからきているような気がする。

以上は私のごく個人的な印象で、異論のある人もいるかもしれないが……

ただ、“音楽帝国主義”的な誹謗は今となってはそれはウィキペディアなどを見ればわかるように、明らかな誤解だと思う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3
そして剽窃というものはポピュラー音楽にとってはよくも悪くも必ずつきまとうものだし、それがシーンに刺激を与えてきたのだと思う。

どうも、ポール・サイモンの音楽についてはうまく語ることができない。
長年聴いているのだが、やはりアメリカ国内で暮らしていないとわからない部分もあるように思える。

とっつきづらい音楽ではない。むしろ聴きやすい音楽である。
だが、ぱっと聴いてすぐにわかってしまうような浅薄な曲は1曲もない。
聴けば聴くほどわかってくる。
なかなかこういうアルバムを出すポピュラー音楽の人は少ないと思う。
いまだ、私はこのアルバムを私は咀嚼しきれていない。

ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット

ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット

若い世代の人は、もしかすると「サプライズ」を聴いてから入ったほうがわかりやすいかもしれない。