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ファー・イースト・ファミリー・バンド「多元宇宙への旅」

ジュリアン・コープの「ジャップロック・サンプラー」で高く評価されていたので、今まできちんと聴いた記憶がなかったのだが挑戦してみた。彼のランキングでは4位である。
もしかしたら聴いたことがあったかもしれない。ただ、「ジャップロック〜」を読むまでこのバンドのことはすっかり忘れていた。
「ジャップロック〜」によると、ヴァージンレコードのあの有名なマナースタジオでクラウス・シュルツ(ここでは私に馴染み深いシュルツ表記にさせてもらう)プロデュースで録音されていたのだ。
確認していないが、多分日本人としては初だと思う。
当時はそんなことは知らなかったか、意識していなかった。


実はアルバム・ジャケットのセンスなどに、どこかヤバイものを感じて避けていたのだ。
このジャケットを見たらあまり聴きたいと思う人は今はいないのではないだろうか。
そして多分、当時の多くの人も。
↓これである。

多元宇宙への旅

多元宇宙への旅

↓CDにはイラストもついていた。当時はもしかしたらポスターだったのかもしれない。
[:]
部屋の壁にこれが貼られていたとしたらこれはすごい、というかヤバすぎる。
この船、一体どこに向かっているのか……。
私はこの船には絶対乗りたくないです。

世代が下の人間にこのイラストを見せたら「『サージェント・ペパーズ』じゃないですか」と言われた。
そういう見方もあるのかと妙に納得した。
自分としてはなんかあやしげな宗教がかった“宇宙船地球号日本丸”と思っていた。
人に意見は聞いてみるものだ。

で、音なのだが、前作「地球空洞説」とはかなり違った。
ピンク・フロイドまんまの展開や、癖のあるギターサウンド、大真面目だが妙な雰囲気をかもし出すコミカルにして怪しい歌はもはやない。

シンセをフィーチャーした内容でこれは当時聴いたクラウス・シュルツの音楽に非常に近い。
「ミラージュ」とか「ムーンドーン」とか当時の廉価版のLPで聴いた音世界を思い出した。

ただ、実は私は、その時期のクラウス・シュルツの作品が苦手なのだ。
長時間聴いていると息苦しくなり頭が辛くなってくる。何故なのかはわからない。
というところで記憶が甦った。
聴いてみたが、自分に合わなかったのでほとんど聴かなかったのだ。
英国人が聴くとオリエンタルで新鮮なものを感じるのかもしれない。
このバンドについてはジュリアン・コープと私は意見が違っているようだ。

当時のライナーノーツもCDについていたが、時代臭たっぷりのかなり意味不明の文は正直読むのがつらかった。

ちなみにこのバンドのリーダーの宮下文夫(故人)、高橋正明(現・喜多郎)は後にヒーリング系の音楽家として成功している。
タンジェリン・ドリームのメンバー、クリストファー・フランケもヒーリング系のアルバムを何枚も出している。

クラウス・シュルツについては数年前、同名の人物がバイロイト音楽祭の総監督に選ばれ、「えっ、あのクラウス・シュルツが。大出世!」と思ったが、別人と知り、「それは、そうだよな」と思ったことがあった。

4枚目となるラスト・アルバムは
↓である。このアルバムジャケット、行くところまで行っていまったという感じだ。
神様みたいな人の首が空に浮かんでいる。天空人……
さすがにもう聴かないと思う。

天空人

天空人