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ベンジャミン・フルフォード「闇の権力者たちのエネルギー資源戦争」

“闇の支配者”シリーズ(私は勝手にそう呼んでます)を手掛ける謀略本の人気作家ベンジャミン・フルフォード
彼が今年の8月に出した本。
「闇の支配者たちが仕掛けたドル崩壊の真実」に続く著作となるようだ。

今まで2冊ベンジャミンさんの本を読んだ。
「闇の支配者たちが仕掛けたドル崩壊の真実」
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110922/1316658118
「図解 世界『闇の支配者』」
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20110925/1316919805

今回も、明快に闇の支配者による陰謀論を展開しており、すらすらと読み進めることができた。
アメリカの財政赤字がデッドラインを超えつつある現在、ドル石油本位制を守ろうとする闇の支配者、そして原発を進めようとする別の一派などのことが語られている。

書かれた時期からして、東日本大震災福島第一原発の事故以降を踏まえての展開となっている。
ただし、リビアカダフィ体制崩壊前に書かれたものである。

以下の章立てとなっている。

第1章 連鎖するイスラム民主化革命に隠された真実
第2章 原油資本主義者たちが始めた最後の暗闘
第3章 アメリカの戦争経済に翻弄される世界
第4章 目前に迫るドル膨張の限界点とアメリカ破綻
第5章 世界を揺るがす“ユーロ崩壊の衝撃”
第6章 エネルギー政策の大転換が日本最躍進のカギ

各章ごとに「読み解くポイント」というものが冒頭にある親切な章構成となっている。
全体を通したキーワードは、石油利権とドル機軸体制の崩壊、ユーロ崩壊、金本位制、食料需要問題、エネルギー問題あたりだろうか。

以下、各章について興味深い部分、概略をメモ書きする。

第1章 連鎖するイスラム民主化革命に隠された真実【「イスラム革命」を読み解くポイント】
中東・北アフリカで“民主化”とも思われる反体制デモが頻発している。
そこではツイッターフェイスブックなどのSNSが民主化運動の後押しをしたようにみなされている。
だが実はそれは闇の支配者たちによる情報操作による可能性が高いそうだ。
闇の支配者たちは“革命”によって既存の独裁者の体制をつぶし、彼らが隠匿した資産を横取りし、傀儡政権を置くことで石油利権を手中に収めようとしているのだそうだ。
著者の得た情報によると、以下のことがあったらしい。
「CIAはイスラム社会に住む『フォロワー』や『友達』が多く、影響力の大きいユーザーを極秘裏にリクルートしたという。そしてキーパーソンとなりうるユーザーたちをアメリカに呼び、買収や脅迫、洗脳を行った。彼らは大衆を扇動するための特別な訓練を施され、本国に戻されたのだ。国内の支配体制が強固だったチュニジア、エジプト、シリアといった国々では民衆の自発的な放棄は難しいと見られていた。ところが、国内外から同時多発的に『デモをやろう、独裁者を倒そう』という声を上げることで、当局の規制を切り崩すことができたのだ。また〜アメリカ空軍は数百人分の架空フェイスブックアカウントをAIで操るソフトを開発。ムバラクを退陣に追い込んだエジプト革命では、これが実験として使用されたという」(P44)
そして闇の支配者たちの最終的なターゲットは最大の産油国であるサウジアラビアを傀儡国家にすることであると語る。

第2章 原油資本主義者たちが始めた最後の暗闘【「原油資本主義者」たちを読み解くポイント】
この本が執筆された時点ではリビアカダフィ体制は維持されていたので、読んだ時点から見ると若干見通しは、ずれたものとなっていた。
興味深かったのはカダフィが進めていたという砂漠を緑化するというプロジェクト。この一大プロジェクトは一定の効果をあげていたが、一連の騒動で凍結状態にあるという。
また、この章では世界に2種類のドルがあることが語られる。
「国際通貨として使うことができるドル」と「アメリカ国内でしか役に立たないドル」があるとのことだ。
“役に立たないドル”とは2008年の金融危機以降にFRBが刷っているドルだという。実はドルを刷る権利をもつ団体(国家も含める)は252あるのだという。日本もそれに含まれるそうだ。
たとえば日本に対米黒字があった際、日本はその分の金額のドルを“刷る”ことができるのだという。そしてそこにある符牒が打たれるとのことだ。
国際通貨として使うことができるのは対米債権を持つ団体が“刷った”もので、金融危機以降、FRBの刷ったドルは国際的に認められなくなっているのだという。
ほかに興味深かったのは、日本が進めていたイランのアザデガン油田開発からの撤退についての指摘。日本は20億ドルを費やし、開発後の原油権益の78%を確保する契約で事業を進めていた。だが、アメリカの対イラン制裁への協力を強制され、あっさりとその権益を放棄したのだ。その権益は中国が受け継いだという。
また、オバマ大統領が原子力推進派の急先鋒との指摘もしている。

第3章 アメリカの戦争経済に翻弄される世界【「アメリカの戦争経済」を読み解くポイント】
ここではウサマ・ビンラディン殺害ニュースに触れている。著者は、さまざまなニュースからビンラディンはすでに病死しており、今回の殺害作戦はやらせのパフォーマンスだったと指摘。
さらにIMFのドミニク・ストロカーン専務理事がホテル従業員に性的暴力を働いた事件に関しては、闇の支配者側からの“罠”だったと解説。フランス大統領をも目指し、支配者にとって都合の悪い行動をすることが予想される実力者のストロカーンを排除したというのがこの事件の真相と語る。

第4章 目前に迫るドル膨張の限界点とアメリカ破綻【「アメリカ破綻」を読み解くポイント】
アメリカの地方財政は危機に瀕している一方、低所得者向けの食料補助政策“フードスタンプ”の受給者が4500万人を突破するなどアメリカ本国でも経済のほころびは顕在化しつつあるという。
アイダホ州カリフォルニア州などでは財政危機のため刑務所の受刑者を早期に釈放する計画が進んでいると語り、治安の悪化を懸念する。貧困の拡大もさらに治安の悪化を促進するだろうとの指摘も。
「世界の経済状況を知れば知るほど、アメリカとドルのシステムは私たちの未来を破滅に向かわせていることがはっきりしてくる。経済的惨事はすぐそこに迫ってきているのだ」(P155)でこの章は締めくくられる。

第5章 世界を揺るがす“ユーロ崩壊の衝撃”【「ユーロ崩壊」を読み解くポイント】
これも10月のギリシャ国債デフォルト危機の前に書かれたもの。
ユーロ圏内では“南の危機を北が救う”ことへの不満がたまっていることを述べている。
この章の後半では資源と食料の価格上昇への懸念を語っている。
食料高騰の理由として5つの理由を挙げている。

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1.需要の拡大
2.冬季マネーの流入
3.異常気象による凶作
4.世界的な水不足
5.原油高騰

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需要の拡大としてて中国、インドの経済的発展を著者は挙げている。
そんな中、著者は世界の食料事情を牛耳る食物メジャーと闇の支配者との関係を危惧している。

第6章 エネルギー政策の大転換が日本最躍進のカギ【「エネルギー政策」を読み解くポイント】
この章は陰謀論というよりは、これからの日本の可能性についての文章となっている。
原子力神話への疑問を投げかけ、風力発電、波力発電、地熱発電の可能性を語る。
ただ、この章になるとなぜか文書の説得力がなくなり、ありきたりの主張となっているように思えたのが読んでいて不思議だった。
“謀略”というキーワードにならないと著者は燃えないのだろうか……

読んだ印象としては、すでにベンジャミンさんの言いたいことはわかっているので、新鮮なものはあまりなかった。
とはいえ、新聞では書かれない事実、視点の提示をわかりやすく繰り広げている点で今回も読んでみて損はなかったと思う。
軽くに読めてそれなりに、ためになりました。

もちろん、鵜呑みにはしていません。

闇の権力者たちのエネルギー資源戦争

闇の権力者たちのエネルギー資源戦争