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映像、書物、音楽などについての感想

ベネット・ミラー監督、ブラッド・ピット主演の映画「マネーボール」

アメリカのメジャー・リーグを舞台に
貧乏球団のゼネラル・マネージャーが、独自の理論を駆使して年俸は低いが勝利に貢献できる選手を集め、
ヤンキースら金持ち球団に対抗してリーグ戦に挑んでいく姿を描く人間ドラマ。

モデルとなったのは実在の人物アスレチックスのゼネラル・マネージャー、ビリー・ビーンという人。
原作となった彼の伝記「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」(マイケル・ルイス著)はアメリカでベストセラーになったそうだ。

監督は「カポーティ」のベネット・ミラー
脚本は「シンドラーのリスト」などのスティーブン・ザイリアンと「ソーシャル・ネットワーク」のアーロン・ソーキンの2人の名義となっている。どうもアーロン・ソーキンの比重が高いようだ。
ブラッド・ピットが主人公のビリーを熱演、彼をサポートする異能のオタク青年をジョナ・ヒルが好演している。
カポーティ」では主演したフィリップ・シーモア・ホフマンはチームの監督を演じている。

以下、ネタバレにならない程度のあらすじ。

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ビリーがゼネラル・マネージャーを務めるオークランド・アスレチックスア・リーグのプレイ・オフに進出するが敗退。
ワールド・シリーズへの進出は逃してしまう。
来期への策を練る中、次々と主力選手が金のある球団に移籍してしまう。
資金不足の球団でどのようにして選手の補強をするか悩んでいたビリーは、他球団で選手の能力判断で特異な才能を発揮しているオタク青年・ピートと出会う。

ピートの持つ膨大な選手、試合の解析データを元に、ビリーは新たな理論に基づいてチームを作ることを決意。
2人はその“マネー・ボール”理論にしたがって年俸と評価は低いが、チームとして勝利に貢献できる選手を集めていく。
データを駆使した特異な選手の選考方法は、球界経験者たちからバカにされるが、
ビリーは持論を信じて格安で勝てる選手を集め、リーグ戦に挑んでいく。

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原作は読んでいないのだが、
映画については、
タイトル通りに“マネー”と“ボール”つまり“ビジネスと夢”を軸に戦う男たちを描いた人間ドラマ、というのが私の印象だ。

ビリーは高校時代、選手として大きな期待を受け、名門スタンフォード大学に特待生で入学できたのだが、プロの道に進む。
だが、プロとしては成功することなく引退、自らスカウトマンに転向した。
プロ選手として成功するという夢には敗れたのだ。
そしてスカウトマンを経てゼネラル・マネージャーとなり、ビジネスとしての野球に挑む。

映画でのビリーは試合は球場では見ない。
ビジネスとして野球に取り組んでいるため現場には踏み込まないのだ。選手とも距離を置いている。
感情的にならないためだ。ビジネスだから。

だが、チームの不振が続く中、敗戦後にはしゃぐ選手を見てビリーは激怒する。
「負けてくやしくないのか」と感情をあらわにする。
そのシーンからビリーが変わる。
ビリーは選手と積極的にコミットしてアドバイスをするようになる。
そしてチームが変わっていく。
そこから連勝街道を歩んでいく過程が胸のすくような描写で描かれる。
このあたりが映画としての見どころだ。

興行としてのスポーツの世界を描いた作品としては
アメフト業界を舞台にしたオリバー・ストーン監督、アル・パチーノ主演の「エニイ・ギブン・サンデー」を思い出した。

だが、ストーン監督作は映像、音楽に過度のメリハリを強くつけたエッジの効いたものとなっていたが、こちらは野球ということもあり、「ナチュラル」「フィールド・オブ・ドリーム」にも通じる“おおらかな男のロマン”を感じさせるテイストになっている。
そのあたりのいい意味でのゆるさがこの映画の魅力だ思った。

クライマックスでの見どころもあり、疲れたビジネスマンが見るにはオススメの映画だと思う。