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映像、書物、音楽などについての感想

久保ミツロウ「モテキ」

4巻まとめて読んだ。
面白い。だが、物語の世界にはあまり入る込むことはできなかった。
描かれる世界観が何か腑に落ちなかったのだ。
主人公が自分とは年齢が違うというのはあるのだが、それだけではないように思えた。
年齢が離れていても感情移入できるのがフィクションのいいところだから。

モテない男がモテたときにどうなるかを面白おかしく描いた話といってしまえばそれまでなのだが……
この作品には、何か受け入れるのに抵抗のある世界観があるような気がした。
実は読んでいるとき、作者は男性と思っていたのだ。

この作者は誰の視点に自分を投入してこの作品を書いているのだろうと思った。
そのあたりがどうも違和感があった。
作者が主人公に感情移入しているとすると、自分に都合のいい女を妄想で設定しておきながら、関係が進展しない世界を描いている?
嫌な感じに屈折している印象を抱いた。

読み終えて、しばらくたってから作者が女性ということを知った。
それを知り、ちょっと混乱した。

そして今の時点では、以下のような感じなのかなと思っている。
ひどいミスリードの可能性もかなりあるがとりあえず記録しておく。
後に更新するかもしれない。

作者は自分の好きな(理想とする)男性として藤本幸世を設定。
ただ、そのキャラは非常に自虐的で恋愛下手。そしてその男性的魅力はわかりずらい。
だが、作者はそういうキャラクターが好きだ。
そんな藤本に、作者は自分の妄想するさまざまなタイプの女性をあてがう。
その中でも、作者は土井亜紀に最も自分の感情を移入して、主人公の藤本幸世に恋することをイメージしながら書いたのではないか。
物語の中では藤本に絡むほかの女性も登場させる。それらにもそれなりに自分を感情移入させているとは思う。
だが、初めと終わりの舞台をフジロックにして、そこに土井亜紀を登場させているので、結果的には藤本と土井亜紀の話として収束できている観がある。
結果的にそうなったのかもしれないが、作者は無意識のうちにそう収束するように書いていたという気もする。

負け組のさえない男だが、作者にとっては魅力のある藤本幸世に、自分の妄想する女性をぶつける物語。
そういう話なのではないだろうか。

あと、自分が男だったら藤本幸世なのでは、という設定から描くというのもあるが、そうなると非常に屈折した作品と思われる。ただ、それならそんなに世界観についての違和感はない。

上記の2つがごっちゃになっているものとも思える。

作者が女性と知って作品の印象が変わったというのも変な話ではあるが、自分としてはこのことは興味深いことだった。
4.5巻も読んでみて、その後にまた更新したい。
現在書いていることが、ものすごい的外れなことがわかったりするのも、また楽しみだ。

モテキ (1) (イブニングKC)

モテキ (1) (イブニングKC)

モテキ 2 (イブニングKC)

モテキ 2 (イブニングKC)

モテキ 3 (イブニングKC)

モテキ 3 (イブニングKC)

モテキ(4) (イブニングKC)

モテキ(4) (イブニングKC)