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映像、書物、音楽などについての感想

ガス・ヴァン・サント監督、ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ主演の映画「永遠の僕たち」

東京国際で先行で上映されていた。
予告編で気になっていたので見た。

ヘンリー・ホッパーのたたずまいが魅力的だったからだ。
別にデニス・ホッパーの息子ということは特に意識していなかった。

ポスターの写真はこの年になるとちょっと見るには気恥ずかしいものがある……。

この映画はミニプロット(ハリウッド風に言うとログ・ライン)だけで語ると、
これまで嫌というほど映像化された、苦笑してしまうほど凡庸な、陳腐といっていいものだ。

“難病で死を前にした少女と、事故で両親を失い生きる気力を失った少年が恋に落ちる。”

誰でも思いつきそうな、お話である。

だが、私はこの映画を見てひどく感動した。

おそらく、
役者、演出の生み出した映画の魅力、
そしてこのミニプロットを膨らませた際の脚本家によるさまざまな仕掛けによるものなのだろう。
結果として映画は素晴らしいものになっている。

ヘンリー・ホッパーの、なんというか少年の面影を残す危うげな感じがとてもいい。
ドラッグなどにはまって失敗しないでほしい役者だ。

音楽担当は元オインゴ・ボインゴダニー・エルフマン。手堅い音楽を聞かせるのだが、
スフィアン・スティーブンスなどの挿入曲、特に冒頭とラストの曲が非常に印象に残る。

ビートルズの「トゥ・オブ・アス」で始まり、
ニコの「美しい季節(The Fairest of the Seasons)」で終わる。

そして映画自体は
葬儀の際に友人・家族が故人のことを語るシーンで始まり、
葬儀で主人公が亡くなった恋人のことを語り始めようとするシーンで終わる。

ラストのヘンリー・ホッパーの柔らかな微笑がものすごく素敵だ。

ガン・ヴァン・サント監督が何度もテーマとしている“若さと死”を
今回はストレートに純度の高い美しい作品として仕上げた秀作だと思う。
ここで描かれているのは本当に“美しい季節”である。
もはや私は若く美しい季節には生きていないせいか、逆に感情移入してしまった。

映画のラストに流れる
IN MEMORIES OF DENNIS HOPPER
の文字に思わず、
ホロリとしてしまった。

この映画を見て、
「青い鳥」の思い出の国のエピソードを思い出した。
思い出の国についたチルチルとミチルは死んだおじいさんや犬と再会する。
おじいさんはこう語っていたと思う。
「人は死んでも、その人が心の中で思い出してくれたなら、いつでも会うことができる」

これは、この映画の根底にあるテーマのひとつだと思う。

個人的にはとてもいい映画だと思った。
「美しい季節(The Fairest of the Seasons)」という曲がふさわしい映画だ。

意外に若い人より、年長の人が見たほうがホロリとくるのでは。
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