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シカゴ『シカゴIX~偉大なる星条旗』

Chicago IX - Greatest Hits

Chicago IX - Greatest Hits

正規盤としては9作目にして初のベスト盤となったアルバム。

今回、ジャケットが今までと大きく変わり、メンバーがシカゴの看板のペンキ塗りをしているというコミカルな設定の写真となっている。

このバンドは、アルバム・ジャケットについては以下に並べたように“Chicago”のロゴのみが第5作まで続いた。
アルバム・タイトルもなし(邦題は妙なものが時々ついていたが……)。
Chicago Transit AuthorityシカゴII(シカゴと23の誓い)シカゴIII デラックス・エディションAt Carnegie Hall
Chicago 5シカゴVI(遥かなる亜米利加)-(紙ジャケSHM-CD)シカゴVII(市俄古への長い道)-(紙ジャケSHM-CD)シカゴVIII(未だ見ぬアメリカ)
6作目の「VI 遥かなる亜米利加」では小さくロゴ上に初めてメンバーの写真を載せたが、むさくるしいひげ面の写真だったことを思えば、ずいぶん変わったものだ。
コミカルなタッチのこんなアルバムジャケットの違いからも、ポップなものを志向するバンドの変化がうかがえる。

『1』から2曲、『2』から3曲、『5』から1曲、、『6』から2曲、『7』から3曲。
『4』はカーネギー・ホールのライブなので、『3』『8』からの曲がないということになる。

こうして各時代の曲を並べて聴くと『1』『2』からの曲は、その荒さとある種の素朴さが目立つ。

とはいえ、個人的には洗練されてきた『6』『7』の曲よりも、初期の作品の方が、聴いていて心を動かされるのが音楽の不思議なところだ。

このバンドは複数のソング・ライターとシンガーがいることがバンドの幅を生んでいるが、個人的にはロバート・ラムの曲が気に入っている。
アメリカ、日本での評価は知らないが、アルバムを続けて聴いた今、当時の彼はかなり突出した才能のあるソング・ライターだったと思っている。

実は『5』『6』には彼のいい曲がいくつもあるのに収録されておらず、ジェームズ・パンコウ、ピーター・セテラの曲が比較的多く収録されている。そしてテリー・キャスの曲は収録されていない。
このバンドの人間関係については知らないので、そんなことからバンド内の力関係を推測してしまう。
ロバート・ラムは、メインのライターでシンガーなのだから、バンドでの重要度は非常に高かったはずだが、意外にジェームズ・パンコウあたりがバンド・リーダー的な存在だったのかもしれない。

ただ、ジェームズ・パンコウ作曲の「Colour My World」はとてもいい曲だ。
本当は収録アルバムの『2』で聴いたほうがいい。前の曲の「West Virgina Fantasies」からの流れがいいので単独で聴くと若干、その魅力が落ちてしまう。

この後、多くのベスト盤が出たバンドなのでもはや、このアルバムもあまり聴く人はいないのかもしれない。
個人的にも曲のセレクトにはちょっと納得できないものもある。