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万城目学「鹿男あをによし」

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

万城目学の小説第2作。
デビュー作「鴨川ホルモー」に続き読んでみることにした。
↓「鴨川ホルモー」の感想。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120110/1326213927

書評とかは読んでいないので、どう評価されているのかは知らないが、
私はこの小説を、夏目漱石「坊ちゃん」のバリエーションと思いながら読んだ。

ふとしたことで関東から田舎(失礼)の学校に赴任することになった青年。その青年が短い赴任期間で巻き起こした騒動を描く。

という話である。
“きかん坊”なところがあるキャラクターの設定にも、「坊ちゃん」を感じた。

ただ、この小説はそのことをあまり意識させない、荒唐無稽なアイデアが盛り込まれている。

感想としては、
私は、「ホルモー」よりは「鹿男」のほうが面白かった。
この作者、2作品読んだ印象から推測するに、育ちがよく、あまり俗世間に触れることなく、そのまま京都大学に入った人なのではないだろうか?
ヤンキーの仲間になるとか、あるいはいじめられるとかの経験はなさそうである。
登場人物に現代的な屈託が感じられないのがいい。

前作も今作も、一般的な同世代のストリートの感覚が小説に感じられない。
登場人物は、どこかのんびりしていて話し方も古風である。

今回は奈良という場所の醸す雰囲気もあり、そういったキャラクターが生き生きとして動き回っているように感じられた。
剣道部という設定もよかった。

特に、山場のひとつである剣道の試合シーンは、読ませ所として作者が存分に力をこめて書いていることが感じられ、私も楽しく読むことができた。

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実は'08年のテレビドラマ版は見ており、脚本も以前読んでいた。
映画化の企画も進んでいると確か脚本を掲載していた月刊ドラマの記事にあった記憶もあるが、ドラマについては、もはや映画化どころか、再放送もないだろう。

小説を読んだ人、テレビを見た人は知っていると思うが、この小説、先の「坊ちゃん」のプロットのひな型に、荒唐無稽な日本神話のアイデアをメインのお話としてはめ込んでいるのだ。

それは、
「鹿島大神宮のそばに住む男が、(神に選ばれて)奈良を訪れることになり、地底に潜むなまずが起こす日本の大地震を治める」
というとんでもないお話である。

小説でもテレビでも大地震が起きそうだという表現や、余震の場面が随所に登場する。

そういう意味で、このご時勢、この作品が映画化されることはまずないだろう。
鴨川ホルモー」で京都
プリンセス・トヨトミ」で大阪
と映画化されたが
奈良編の今作はそういった意味では残念なことになった。

テレビドラマを見て、主人公の先生に玉木宏、女子高生・堀田に多部未華子、リチャードに児玉清のイメージがあり、それぞれの役者に好印象を持っていた。
そういった意味でも映画版はちょっと見たかった。
今は亡き児玉清に代わる人としては誰がよかっただろうか?
年齢的には下になるが三浦友和あたりだろうか。

まあ、そんなことを考えても、今となっては映像化はないでしょう。

鹿男あをによし DVD-BOX ディレクターズカット完全版

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