見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

よしながふみの対談集を読んで、どのような小説を書く人なのかと興味を抱いていた。
よしながふみ対談集「あのひととここだけのおしゃべり」を読んだ感想メモ。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20111104/1320429667

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

やっと著作を読むことができた。
この小説は直木賞受賞作。2006年3月発行。
東京都町田市をモデルにしたまほろ市を舞台に、便利屋を営むまだ中年ではないが、バツイチで青年ともいえない男2人の行状を描く内容だった。

男2人コンビの便利屋が、色々な騒ぎに巻き込まれる、いわゆる“バディもの”といっていいと思う。

キャラクター、背景となる世界には魅力を感じた(実際の町田とは違うが)。

“ハードボイルド風”比喩の多用については、人により好みが別れるかもしれない。私は正直読むのがめんどくさく思えるところもあった。
だが、時折、ハッとするような表現があり、アクション→リアクションでつなげる描写にも、おおっと引き込まれるところはあった。

ただ、ちょっと健全かなという感はある。そこには物足りなさも少しある。
もう少し、エグイ部分があってもいいようにも思うが、これが作者の作風なのかもしれない。
著者は横浜雙葉出身とのことだ。
程よく地味なお嬢さん学校で漫画に耽溺していた人が書きそうな少女漫画テイストのハードボイルドと言っていいかもしれない(すみません。言いすぎですね)。
“女の人からみた男の世界”的なものにはなっていると思う。

そして性的な描写は控えめになっている。暴力描写も同様。
これが作風なのか、あえてセーブしたのかは、これしか読んでいないのでわからない。

最終話で書かれた主人公の結婚、離婚、子供のエピソードについては正直、絵空事と私には感じられた。あまり切迫感が感じられなかった。

ただ、読んだ感想としては「面白く読むことができた」になる。
この人が描く世界は、私は嫌いではない。むしろ好きなのかもしれない。
舟を編む」を読む前に、何冊か読んでみることにする。