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スティーブン・レヴィ「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」01〜03章

書籍

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

IT関係の大御所ライター、レヴィの著作は「マッキントッシュ物語―僕らを変えたコンピュータ」「iPodは何を変えたのか?」を昨年に読んだ。
マッキントッシュ物語

マッキントッシュ物語

iPodは何を変えたのか?

iPodは何を変えたのか?


書かれていることはすでに過去となった事象についてだが、非常に面白く、共感するところも多かった。

そのレヴィが現在形の企業グーグルについて、その歴史と今後の展望について書いた書籍の日本版「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」が昨年末に出版された。
ずっと読みたかったのだが、600ページ以上あり、その厚さからついつい後回しになっていた。
やっと読み始めた。

やはり読み始めると面白い。
現在、第3章の「邪悪になるな グーグルはどのように企業文化を築いたのか」を読み終えた。

グーグルについての単行本としては、すでにケン・オーレッタ「グーグル秘録」、NHKスペシャル取材班「グーグル革命の衝撃」は読んでいたので会社の概略、創業者であるラリー・ペイジ、サーゲイ・ブリンの人となりはそれなりに理解していた。

グーグル秘録

グーグル秘録

グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)

グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)

特に「グーグル秘録」については、著者オーレッタは自身が紙の“旧メディア”のジャーナリストであることを意識した上で、マスコミのもつ既得権を損なう存在でもあるグーグルという新しい潮流を“フェア”に理解、解説しようとしたもので、非常に面白く読むことができた。

ただオーレッタは自らをグーグルとは対立する“旧メディア”の人間と位置づけ、グーグルを理解しつつも、彼らに抱く“違和感”“問題点”が何であるかを明確にさせることに主眼を置いていた印象がある。

今回のレヴィの著作はその点スタンスが「グーグル秘録」のオーレッタとは違う。
レヴィ自身はマック誕生のころからITについての記事を書き始めたライター。
ハッカーズ」やアップル社の商品についての著書などで、コンピューター科学者、エンジニアの抱く“理想主義”に対してシンパシーを表明してきた人物だ。
グーグルについては創生期から深い興味を抱き、10年近く取材を続けてきたという。
グーグルの創業者が主張している“知の共有化”の発想には共鳴している人間だと思う。

このあたりはオーレッタとは対照的な位置にあるライターともいえる。オーレッタも詳細な取材を経てあの大著をものにしたわけだが、付き合いが長く、価値観も近いレヴィの取材のほうが、対象には深く突っ込んでいる。
ただ、客観性のためレヴィは、今回の著書を書くにあたり「インサイダーの視点をもったアウトサイダー」(P18)を意識したという。
目次は以下の通り。

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日本版への序章
プロローグ Googleを「検索」する
01 グーグルが定義する世界 ある検索エンジンの半生
02 グーグル経済学 莫大な利益を生み出す「方程式」とは
03 邪悪になるな グーグルはどのように企業文化を築いたのか
04 グーグルのクラウドビジネス 全世界に存在するあらゆる文書を保存する
05 未知の世界への挑戦 グーグルフォンとグーグルTV
06 谷歌 中国でぶつかった道徳上のジレンマ
07 グーグルの政治学 グーグルにとっていいことは人々にとっていいことか
エピローグ 追われる立場から追う立場へ
謝辞
訳者あとがき

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第1章はグーグルの歴史
第2章はアドワーズアドセンスというグーグルの生んだ新しい広告システムについて
第3章はグーグルの企業文化について
以上が整理された形で書かれてある。

第3章まで読んだところで、この本で新たに知った部分、興味深かった点をメモとして残す。
今回はこの本の概略的なものは省く。

ニコラ・テスラについて
創業者2人の片割れで現CEOのラリー・ベイジはニコラ・テスラに対して深い共感を抱いているそうだ。セルビア出身のテスラは、天才的な発明家でありながら既得権者や大企業と対立したため不遇なまま終わった人物。
グーグルという会社は情報の共有化を主張するが、その一方で社外への極端な秘密主義でも知られる。その秘密主義はペイジからによるものが大きいとここでは書かれている。
高い知性を持つゆえに、社会からの理解を得られなかったテスラのことが、ペイジの秘密主義につながっているということもあるのかもしれない。

◆無料の社内食堂について
「グーグル秘録」などでも無料の社内食堂について書かれているが、レヴィの記述がもっとも正確なものに思える。社内食堂設立の経緯も当事者からのコメントをきちんと取っている。初代食堂のコックだった人物はグレイトフル・デッドの元専属コックと「グーグル秘録」では書かれていたが、これは誤りで、デッドのコックをしたこともあった、というのが事実だそうだ。

◆創業者である2人に対するモンテッソーリ教育の影響
ラリー・ペイジ、サーゲイ・ブリンは偶然だが、小学校はモンテッソーリ教育の小学校に通っており、そのことが2人の行動規範に大きな影響を与えたのではとレヴィは書いている。
創業者2人の規制の枠にとらわれない自由な振舞いは「自発性を重んじた教育を行う」モンテッソーリ教育の影響ではないかと再三レヴィは語っている。
この部分についてはちょっとピンとこなかった。
日本の幼稚園でもモンテッソーリ教育を取り入れたところはあるので私もそれなりにモンテッソーリについては知っていたが、アメリカでのモンテッソーリ教育はもっと極端なものなのかもしれない。
2人のさまざまな自由な行動を紹介した上で、著者はこの言葉で第3章を締めている。
「しかし、創業者たちの人生観に大きな影響を与えたモンテッソーリなら、そうした行動を大いに評価したかもしれない。『役に立つ人間になるには……自発的な行動を抑圧したり、恣意的な理由で作業に従事させたりするような環境から徹底的に自由になる必要がある』と彼女(マリア・モンテッソーリ)は書いている」

◆作業目標の定量化
グーグルが採用しているOKRというマネジメント手法は「自分が何をやりたいかではなくて、作業をセグメント化し、どんな結果をいつまでに出せるか、時期を決めて定量化する」(P251)ものだそうだ。そしてグーグルではOKRを達成できないことより悪いのは、目標を大幅に上回る成果を上げることだという。それは社員が誠実ではなかったということ、そして安全策をとって目標を意図的に低めに設定していたことを示しているからだそうだ。このあたり非常にグーグルらしい。

◆2人の創業者のキャラクターについて
以前にグーグルで広報を担当していた人物のコメントが短い言葉で2人のキャラクターを説明しているように思えた。
「ラリーはとても思いやりがあって優しい面もあるが、猜疑心が強くて他人を簡単に信頼せず、社交上のたしなみを欠いていた」
「サーゲイには社交能力はあったが、自分より知的レベルが低いと判断した人間を信用しなかった」(P256)


↓に続く。
スティーブン・レヴィ「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」04〜07章 エピローグ
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120511/1336759432