読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

スティーブン・レヴィ「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」04〜07章 エピローグ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

スティーブン・レヴィ「グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ」01〜03章
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120507/1336401786
からの続き。

04章以降、最後まで読み終えた。

再び目次を以下に書く。

                                                                                                                                • -

日本版への序章
プロローグ Googleを「検索」する
01 グーグルが定義する世界 ある検索エンジンの半生
02 グーグル経済学 莫大な利益を生み出す「方程式」とは
03 邪悪になるな グーグルはどのように企業文化を築いたのか
04 グーグルのクラウドビジネス 全世界に存在するあらゆる文書を保存する
05 未知の世界への挑戦 グーグルフォンとグーグルTV
06 谷歌 中国でぶつかった道徳上のジレンマ
07 グーグルの政治学 グーグルにとっていいことは人々にとっていいことか
エピローグ 追われる立場から追う立場へ
謝辞
訳者あとがき

                                                                                                                                  • -

実は01〜03章部分は
ケン・オーレッタ「グーグル秘録」を読んでいたため、既知のことが多かった。

グーグル秘録

グーグル秘録

ということもあり、今回は04章からが読みどころだった。
興味深い記述が非常に多くあったので、途中で力尽きるかもしれないが、メモを残すことにする。

◆Gメールについて
著者のレヴィはGメールの説明を通じてグーグルという会社のコンセプト事態がクラウド志向であったことを述べている。
そしてプライバシーの問題についても触れる。
個人的な情報をグーグルのサーバに預けることに不安を抱くユーザーと、“邪悪にならない”ことを信奉するエンジニアの楽観的な意識の違いについてレヴィは書いている。

ユーザーのそういった不安、不満についてはこんな記述がある。
「グーグルのエンジニアたちは、こうした不満の声に驚きを隠せなかった。彼らは自分のメールを永遠に保存して「ほしい」と考えていたし、ウェブを通じて全世界が接続させた時代には、情報はSFチックな貸し金庫のような場所にプロの手で安全に保存されるのが理想だと信じていたからだ。彼らにすれば、これが個人情報保護に対する懸念を招いているのは筋の通らない話だった。彼らは機械を信じていたし、彼ら自身の動機も純粋だった。だからユーザーは彼らをもっと信頼すべきだと」(P267)

このグーグル社内の意識と一般通念の違いはこの後もさまざまなトラブルを起こしている。

ただ、私自身はグーグルのその理想主義的で楽観的なマインドにはかなり惹かれるものがあるのでGメールに対する拒否反応はなかった。

◆データセンターについて
グーグルのデータセンターに関しては「グーグル秘録」では社外秘でその実情はまったくわからない、というようなことが書いてあったと記憶する。
だが、レヴィはデータセンターの情報を特別に開示され、この本で明かしている。レヴィ自身はデータストレージ施設をのぞいたこともあったと書いている(P283)。秘密理に進められた世界各地でのデーサセンター建設の過程もスリリングだったが、興味深かったのはマップリデュースというデータセンタにある各サーバを制御する方法。
この方法で大量のマシンをまるで一台のコンピュータで処理しているかのように管理できるとのことだ。この技術は論文として発表され、社外のコンピュータ学者はこの論文からオープンソースプログラムを作成。そして世界でのクラウドコンピューティングを実現しやすくすることに貢献したそうだ。
世界中のコンピュータがつながって1台のコンピュータのようになる。
これってかつてSFで書かれてきたことが実現しつつあるということだ。

◆ファイアフォックスはグーグル内でも改良が進められていた
マイクロソフトにウェブブラウザの市場を奪われたネットスケープはその後、AOLに買収された際の資金で非営利組織モジラ財団を設立した。モジラ財団の主要製品のひとつにオープンソースのブラウザ・ファイアウォールがあった。グーグルはモジラ財団と提携、年に数百万ドル払うことでファイアウォールでのデフォルトの検索エンジンとなっていた。そして提携条件として財団のエース級のエンジニアをグーグルで雇うということになったそうだ。彼らはグーグル社員になってもファイアフォックスの改良作業は変わることなく続けていたという。

◆グーグルツールバー普及の際のエピソード
グーグルツールバーの普及を進める案として、エンジニアの陳天浩はツールバーにポップアップブロック(当時広告ポップアップが非常に流行っていてユーザーは迷惑していた)機能を追加したいと主張。だが、ペイジとブリンはそれを却下。あきらめない陳は社内のペイジのパソコンにポップアップブロック機能を加えたグーグルツールバーをこっそりインストールしたという。その後、ペイジはブラウザの動作が速くなったと感想を述べた。陳は自分がポップアップブロック機能を勝手にインストールしたことをペイジに伝えたそうだ。ペイジはポップアップロック機能の追加を許可したという。ペイジのパソコンは帰った後もつけっぱなしになっていたという。すごいエピソードだと思った。外には秘密主義だが中では驚くほどオープンな会社だ。

スマートフォンをめぐるスティーブ・ジョブスとの確執
ペイジとブリンはジョブスと対面して、グーグルのCEOに最もふさわしい人物と思っていたそうだ。そしてジョブスも2人を気に入っていた。ジョブスは特にブリンとウマがあったそうだ。だが、グーグルが携帯用にアンドロイドOSを開発したことでジョブスは激怒、良好な関係は途絶えた。ただし、Gフォンなるものを作る予定は初めからなかったという。

◆中国進出と撤退までの経緯
第6章は中国編。グーグルは中国進出において検閲を受け入れたが、最終的には中国によるグーグルへのサイバー攻撃があったことで、中国からの撤退を決めた。“谷歌”とはなんだろうと思っていたのだが、これはグーグルの中国でのブランド名だった。独裁体制にある国とのやりとり、中国人エンジニアの李彦宏が百度をつくるまでのいきさつ、グーグルとのシェア争いなど非常に面白かった。個人的には“邪悪になるな”というグーグルの精神が対中国において明快さを失った局面として非常に読みどころがあった。
中国からのハッキングの手法は技術的なことだけでなく、具体的に内部スタッフを“騙す”ことで行ったものだった。

◆グーグルの書籍電子化計画について
この世のすべての書籍を電子化することを考えたペイジは自分で本をスキャンしてどの程度時間がかかるか長時間、さまざまな本を使って試し、時間を計測、予算を想定したという。
結論としてはこんな調子だったようだ。
「これまで全世界で出版された本は全部で何点あるのか? およそ3000万点。だとすれば、1冊あたりのコストが10ドルとしても、3億ドル程度の予算で全世界のすべての書籍をデジタル化できる。世界で最も価値ある知識の源泉をつくり出すためであれば、決して高い金額ではないように思えた」(P554)
グーグルは秘密裏にアメリカの有名大学図書館蔵書のスキャン作業を進めていたが、結局計画は既得権者から、金儲けのためと反発を受けて現時点では止まっている。
ただし、中間地点では出版社、著作権者、図書館協会の三者との話し合いで画期的な和解案を取り付けている。
「グーグルは書籍をデジタル化し、インターネット上でほんの一節を無料で公開できるだけでなく、絶版書籍のデジタル版を販売する独占権を手にするものとされた」(P574)という和解案だ。確かこの和解案のことは日本にも飛び火したと記憶している。

◆エピローグで書かれているSNS事業での立ち遅れについて
ここでは主にフェイスブックに先を越されたことについて書いている。レヴィはフェイスブックの特徴についてこう語る。
フェイスブックが恐ろしいのは、ある意味でグーグルとそっくりなところがあるためだ。確かにフェイスブックはグーグルの驚異的なインフラに匹敵する技術革新を実現したわけではないし、グーグルのように素晴らしい科学的進歩の上に築かれてもいなかった。しかしフェイスブックを率いるマーク・ザッカーバーグは、激しい野心を胸に抱き、エンジニアリングに絶対的な信頼を寄せているという二つの点で、ラリー・ペイジと酷似していた」(P585)

そして、こうも書いている。
「ただし、グーグルにとってより大きな脅威はフェイスブックの収益力ではない。フェイスブックが突きつけた哲学的パラダイムの転換だ。もしかすると、ウェブ上の膨大な情報資源をアルゴリズムで活用するよりも、SNSで過ごす時間のほうが人々のオンライン生活の中心になるのではないか。たとえそうでないとしても、人々のつながりがネット上のあらゆる活動に恩恵をもたらすことをフェイスブックははっきりと示した。グーグルはアルゴリズムとSF小説に描かれた年代記によって構築された未来を追い求めてここまで来た。だが未来への扉を開く本当の鍵は、パーティーの写真を共有したり、頻繁に近況報告をしたりすることにあるのではないだろうか?」

「グーグル秘録」は優れたライターであるオーレッタによる好著だったが、レヴィによるこの見解までには至っていなかった。
とても興味深い意見だと思う。
ただ、グーグル的アルゴリズムによる世界とフェイスブック的つながりの世界はどちらだけというものでなく、並立してからみあうものではないかと個人的には思うが。
そういう意味でグーグルは得意でないSNSに関して、無理をしてフェイスブックと競合しなくてもいいのではなどと思える。まあ、ビジネスの問題ではあるのでそう簡単にはいえないのかもしれないが。

◆グーグルは人口知能の会社!
個人的には、結局このことに尽きると思う。
先日、新聞にグーグルとスタンフォード大学が研究開発している自動装甲車の記事があった。

手放しで運転 グーグル、自動走行車の公道試験
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C9381959FE2EBE2E39A8DE2EBE2E7E0E2E3E09790E0E2E2E2?n_cid=DSGGL001

この本の最後にロボットカーに関しての文章がある。
「業界観測筋は、ロボットカープロジェクトはグーグルが集中力を欠いている証拠だと指摘した。どうしてネット検索の会社が自走式の自動車を開発しなくてはならないのか? だが、実のところ、このプロジェクトは十分グーグルの専門範囲内に収まっていた。ブリンとペイジは創業当初から常にグーグルは人工知能の会社であると定義していたからだ。彼らの目標は、膨大な量のデータを集め、自動学習アルゴリズムによってそれらを処理し、人類全体の脳を補強するコンピュータのような「知性」を開発することだった」(P615)

エンジニアでもなく、グーグルの広告モデルにもさほど興味がない私がグーグルという会社が気になっているのは、この会社にそんなSFのような面白い部分を感じているからだ。
拡張現実(AR)に関しては特に記述はなかったが、当然研究はしていると思われる。

フェイスブックにはそういう面白みは感じない。
SF好きだった自分のどこかを刺激してくれる会社なのだ。
だから、この会社の今後については気になる。


とりあえず、このあたりで終える。
随時、修正をする予定。