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増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

ページ2段組700ページに及ぶものなので、読む前はひるんだが、読み始めると内容に一気に引き込まれた。
堂々たる大著というにふさわしい本だった。
木村政彦という不世出の柔道家の強さを文字の力で実体化させるような長大なドキュメンタリーである。
そして読後感がいい。

大げさに聞こえるかもしれないが、私にとってこの人物伝は、例えばドストエフスキートルストイといったロシア文学の大作を読み終えた後の深い感慨に通じる読後感があった。

私は格闘技については詳しくない。
木村政彦についても、少年時代に「空手バカ一代」を読んで知っていた程度の知識しかない。
そんな私が読んでも魅了される世界がこの作品の中に広がっていた。
木村政彦という好漢を軸として、彼に関わるさまざまなタイプの魅力的な人間が登場する。
ただ、力道山に対しては私はいい感情を抱くことはできなかった。

私が特に興味を抱いたのが、木村政彦に完勝したという阿部謙四郎という柔道家。
京都にかつてあった武道専門学校出身で、戦後はイギリスに渡ったとのことだ。
白崎秀雄による「当世畸人伝」に登場しているとのことなので読んでみることにする。

当世畸人伝 (中公文庫)

当世畸人伝 (中公文庫)

この本を読んで思うことは色々とあったが、ここでは書かないでおく。

“読むことは体験することである”ということを久々に思い出させてくれた。

読むに値する素晴らしい本だと思います。
増田俊也の小説も読んでみることにする。

シャトゥーン ヒグマの森 (宝島SUGOI文庫) (宝島社文庫)

シャトゥーン ヒグマの森 (宝島SUGOI文庫) (宝島社文庫)