リターン・トゥ・フォーエヴァー『ノー・ミステリー』
- アーティスト: チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー,チック・コリア,スタンリー・クラーク,レニー・ホワイト,アル・ディ・メオラ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2011/09/14
- メディア: CD
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'75年にニューヨークのレコード・プラントで録音。
(第2期メンバーとなってからは全作レコード・プラントでレコーディングしている)
このアルバムは今回、初めて聴いた。
前々作『第7銀河の讃歌』に続き、妙なアルバム・ジャケットである。
ジャケットの表は神妙な顔をしたメンバー4人の写真。
ただ、全面に真っ赤なエフェクトがかかっている。
そして裏面はこれ↓ほんとはもっと色味は赤である。
カメラに向かって大口を開けて、何か叫ぼうとする勢いのスタンリー・クラーク、
目をむいて口をあけ驚き顔のレニー・ホワイト、
チック・コリアはニヤけた笑いを浮かべ、見方によっては泥酔したおやじのようだ。
まだ20代前半のアル・ディ・メオラだけが、先輩に囲まれ若干緊張した表情を浮かべている。
この裏面の写真は今までのシリアスなイメージのあったRTFとしては随分異色である。
だが、アルバムを聴き、クレジットを見て納得できた。
各メンバーがリラックスして、4人それぞれの曲を持ち寄りレコーディングしたものなのである。
『ノー・ミステリー』というタイトルどおりに、今までのドラマチックでミステリアスな曲は激減。
特にスタンリー・クラークにその傾向が顕著に出ている。
クレジットにはVocalの文字もある。
彼の作曲である1曲目の「デイライド」から、スラップ(チョッパー)奏法が全面的に炸裂、さらにはすさまじい勢いでスキャットを披露。おめでたいともいえるファンキーな世界を展開している。
勢いづいているのはわかる。
そしてメンバー同士のインタープレイはそれなりに聴きものなのだが、ファンキーなのはわかるのだが……
アルバム全体としては、非常に散漫な内容に思えた。
私の感想としては、各曲がバラバラ過ぎて、まとまりのないアルバムになっている。
そのまとまりのなさが魅力になっていればいいのだが、そうはなっていない。
RTFの代表作でないことは間違いないと思う。
ライナーには、このアルバムがグラミー賞を取ってうんぬんと書かれてあった。
だが、過去の素晴らしいアルバムで取っておらず、これで受賞というのは、グラミー賞ってなんなんだろうという感じでもあり、そんなことをわざわざライナーに書く人間もなんだかなという印象ではある。
そんなことでなく、バンドについての知識の乏しいリスナー(私のような)がなるほどと思うような、興味深いことを書いてほしい。
今まで私が注目してきたサイエントロジーの詩人ネヴィル・ポッターの名前も一応、クレジットにはある。
ここでは“アルバム・パッケージ・コンセプト”となっている。しかも2番目である。
タイトルが「ノー・ミステリー」だし、ポッターによる影響は少なかったのではないだろうか。
正直、あまり聴きどころのあるアルバムではなかった。
1番印象に残ったのはタイトル曲でもあるアコースティック楽器による「ノー・ミステリー(No Mystery)」だろうか。
一時期の坂本龍一がやっていたような曲という印象。
だが、演奏力とバンドの勢いが桁違いなのでこっちは非常にダイナミック。
瑞々しい響きの佳作だ。この佳作とは出来栄えのいい作品という意味でです。名曲とまでいうには地味な作品なので。
このアルバムにある“演奏者志向”が発展して、あのサーカス的プレイが展開する力作『浪漫の騎士』に至ったんだろうなというのは私なりに理解できた。
そんなところだろうか。
これであと、『ミュージック・マジック』を聴けばRTFのスタジオ盤はすべて聴いたことになる。
そして再び、彼らの代表作ということが改めて認識できた『浪漫の騎士』も聴き、感想メモも更新しようと思う。