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水谷竹秀「日本を捨てた男たち フィリピンに生きる『困窮邦人』」

日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」

日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」

文春の山崎努の読書日記で紹介されていたことでこの本を知り、どんなものかと思い読んでみた。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120520

海外で経済的に困窮状態に陥っている在留邦人を「困窮邦人」と呼ぶのだそうだ。
この困窮邦人が最も多いのがフィリピンらしい。
2010年の外務省の資料でも、在外公館に駆け込んで援護を求めた困窮邦人の約半数がフィリピンの困窮邦人だという。
強盗に襲われるなど、トラブルにあって困窮邦人となる例もあるが、フィリピンについては、圧倒的に多いのがフィリピンクラブで出会った女性を追いかけて渡航したすえに、というケースだそうだ。
大半は50歳以上、フィリピン女性に笑顔でもてなされ舞い上がり、有り金すべてをもって日本を飛び出し、その後金の切れ目が縁の切れ目で相手女性の家から追い出され「困窮邦人」になるのだという。
金がなくなれば帰国すればいいのだろうと思うが、その金が工面できないのだという。
困窮邦人はこれまで家族、知人・友人関係で不義理をしていることが多く、送金がままならないらしい。
日本でいえばホームレスと呼ばれることになってしまうのだが、不思議なことにフィリピンでは赤の他人のフィリピン人がこうした困窮邦人に対して簡単な仕事の報酬として粗末ながら食事などの援助をすることがままあるそうだ。

この本では何人かの困窮邦人に長期取材、彼らの出国にいたるまでの事情、困窮邦人となってからのフィリピン現地の人々との交流がつづられている。

著者は「日刊マニラ新聞」の記者。主に殺人事件や逃亡犯逮捕などの邦人事件、邦人社会に関する問題などの社会部ネタを担当しているとのことだ。
ジャーナリストではあるが、いわゆる大学新卒で新聞社に入社したタイプの人ではない。さまざまなコンプレックスも抱えていることを文中で吐露、自身もタイでこういった店の女性にハマったことを告白している。
そして困窮邦人と接し、彼らの見栄からくる嘘、身勝手さに閉口しながらも、自身にある困窮邦人との共通点も見つめている。

正直、困窮邦人はまったく褒められた存在ではない。
むしろ、日本の恥といっていいだろう。
だが、そんな存在でいながら生きていこうとする意志、力のような“妙なもの”は読んでいて感じることができた。
さまざまな人生があるということなのだろう。

この本の趣旨としては、豊かでいながら自殺の絶えない日本と比較して、フィリピン人の国民性には何か独特のおおらかさ、強さがあるのではと探る部分もある。
ただ、安易な結論は出してはいない。


そして、この本を読んで強く感じたのが、
困窮邦人がここまでに至った理由は“女と金”ということ。

あまりに月並みな結論だが、女と金は人生を狂わせるということがわかる本となっている。

正直、大きな興味はなく読み始めたのだが、著者の文章に魅力があり、文を書く上でのスタンスにも好感を抱き、面白く読むことができた。
自分の立ち位置も意識しながら、自分の視線で困窮邦人の問題を書いている佳作だと思う。

ただ、私は困窮邦人の生き方にシンパシーを感じることはなかった。
嫌悪感とかもないが。ただ、実際に周囲にいたら困るかもしれない。
こういう人生もあるのか、というのが読んだ感想だ。