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映像、書物、音楽などについての感想

バット・メセニー『ユニティ・バンド』

ユニティ・バンド

ユニティ・バンド

パット・メセニーの『オーケストリオン』(2010)、『ホワッツ・イット・オール・アバウト』(2011)に続くアルバム。2012年発表。

ギター、サックス、ベース、ドラム編成のパット・メセニー・カルテット“ユニティ・バンド”によるアルバムとなっている。
サックスはクリス・ポッター、ベースはベン・ウィリアムス、ドラムはアントニオ・サンチェス。

今回は、サックス奏者のクリス・ポッターをフィーチャーしたものとなっている。曲はすべてパットが書き、それをセッションで仕上げた。

このアルバム、日本版にはパット本人へのインタビューと1曲ずつの解説が付いていて、内容の理解の手助けとなった。

多くのサックスプレイヤーと共演してきたパットだが、ソロ名義でのアルバムでサックスをフィーチャーしたアルバムは久しぶりだ。
テナーサックスとの共演作としては、マイケル・ブレッカーデューイ・レッドマンを迎えた『80/81』(1980)以来、30数年ぶりとなるらしい。
パットの言葉によると、共演してアルバムを作ろうとまで思うプレイヤーがいなかったということだ。

なぜクリス・ポッターになったのかということについては、自分のギターとの相性がよく、ライブを聴くと、自分が考え付きそうなフレーズを演奏していて共感するものがあったからと語っている。

そして、このアルバムのセッションについては演奏中のユニゾンで息がぴったりあう瞬間もあり、ともにフレーズを生む喜びを味わったという趣旨のことを語っている。

まずはクリスとの共演ということからバンドメンバーを決めていったようだ。

アルバム用に25曲をレコーディングしたが、その中から9曲を選んだとのこと。

パットによると9曲のなかで本格的なバラードは(4)THIS BELONGS TO YOUのみとのことだ。いつもはバラード4に対してほかのタイプの曲1の比率で曲を書いているのでこのアルバムでの曲構成は珍しいそうだ。
そういう意味では、このアルバムは“スタンダードなジャズをシャープな演奏で聴かせるもの”といってもそんなに的外れではないかもしれない。

パットが語っているようにサックスとギターの音色、フレーズの馴染み具合が非常にいい。(2)ROOFDOGSではパットのギター・シンセとクリスのソプラノサックスが絡み合い、聴き分けできないくらい溶け合っている(パット本人も語っている)。

(7)SIGNALS(ORCHESTRION SKITH)は、オーケストリオンのミニ・バージョンの機材とスケッチ(音素材)をスタジオに持ち込み、インプロヴィゼーションを行ったものとのこと。オーソドックスなジャズアルバムといえるこの作品では異色だが、面白い曲。音をループさせながらサウンドを重ねていくインプロ曲だが、演奏者の力量が高いので非常に聴き応えがある。こちらも後半のギター・シンセとサックスの絡み合いが非常に気持いい。これはライブで聴いてみたいものだ。

今回のアルバム、サックスをフィーチャーした“ジャズ”アルバムということで正直、好みからは若干外れるところもあったのだが、演奏のキレがよく深みもある。“ユニティ”の名の通りバンドとしての一体感と伸びやかさもある。
パット・メセニー・グループとは違う魅力をしっかり生んでいる。
私自身としては大御所に若き日のパットが囲まれた『80/81』より気に入った。


来年にはパット・メセニー・グループの新作も予定されているらしい。