見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

やなせたかしの愛と勇気の絵本「そっくりのくりのき」「ロボくんとことり」「セントバーナードとたびびと」

3冊とも'99年に発行された絵本。
やなせ先生は、この絵本3冊について“近年のぼくの「愛の三部作」といってもいいかもしれません”と書いている。
登場人物、舞台設定は違い、共通点もないように思えるかもしれませんが“愛”というテーマでは同じなのだと。

ただ、こうも書いている。
「ぼくは声高に叫ぶことがきらいです。絵本もできるだけ、たんたんとつくります。ただ、わかりやすくて面白いものをつくりたくて、工夫をします」

この3作は、その言葉にふさわしい佳作に仕上がっている。

「そっくりくりのき」
ひとつの生命が終わっても、その生命は、次の世代へ受け継がれて、永遠にいきていくことがテーマ。
やなせ先生はそんな風に書いている。
この話、ちょっと陸前高田の「奇跡の一本松」の逸話を連想させる話でもある。もちろん、この本は震災のずっと前に出版されているものではあるが。
先生が、「奇跡の一本松」に心動かされ、歌まで作ったのもなるほどと思った。

「ロボくんとことり」
これは“愛”の話。
ラストに、ことりがロボくんに語る言葉、それに反応するロボくんのくだりは、やなせ先生ならではの話のうまさだと思う。

セントバーナードとたびびと」
セントバーナード犬の親子の物語。これは“愛と勇気”の話ということになるのだろうか。母親のセントバーナード犬が遭難者を救うため、がけから谷底に飛び降りるシーンが見せ場。


私はやなせ先生は元々ストーリーテリングの達人と思っていたのだが、著作を読み、元々達人ではあることは間違いないが、推敲を重ねてストーリーに磨きをかけている人だということを知った。
シンプルな話なので、時間があったら簡単にプロット分けをして分析してみたいと思う。

この3作、作品ごとに線画のタッチ、配色も変えて見た目についても工夫をこらしている。
80歳のときにこれを描いているのだから、すごいものだ。

4巻は出ていないようなので、本当に3部作となっているみたいだ。
子供に買ってあげるのにはいい絵本だと思う。