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放談集「板尾創路とピエール瀧の考える文化 ハチ公はなぜ剥製にされたのか?」

この本を読んでみたのはタイトルに興味をもったからだ。

「ハチ公はなぜ剥製にされたのか?」
力作ノンフィクション「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」のようなタイトルである。
しかも「考える文化」だ。
もしかすると鋭い見識を披露している対談集なのかもしれない、と思った。

さらに国立科学博物館に大量に保管・展示してある剥製について興味を持つようになったこともあるので、「ハチ公がなぜ剥製にされたか」という理由も知りたくもあり、読んでみることにしたわけである。

↓なぜあんなに大量の剥製が展示されているかについて。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120918/1347987034

この本はクイック・ジャパンに連載されていた板尾創路ピエール瀧の対談を単行本化したものだった。

各回で取り上げられたお題目を以下に列挙しておく。
忠犬ハチ公
ゴッホの「ひまわり」
・ダルマ
・桃太郎
・クリスマス
・修学旅行
・お花見
・煙草
・宝くじ
・ファミレス
人間失格
ジンギスカン
・手紙
・お墓
・映画
フェラーリ
・インスタント麺
・別荘
・オペラ
・Tシャツ
・寿司
・AV
・ペット

で、読んだ感想だが、あまりの内容のなさ、2人のお題目に対するあたりまえすぎる切り口に驚いた。
ユルい放談集として読むにしても、時間の無駄という出来に思えた。
ここで語られていることに“文化”は感じられないし、 “考えて”いるとも思えない。投げられたお題目について、その場で思いつくままに語った内容である。あまり書くと非難になるのでここまでにしておくが、「鋭い」と思った言葉はあまりなかった。

ということで、「ハチ公はなぜ剥製にされたのか?」とあるが、それに関しては、2人によるおざなりの言葉があるだけで、その理由はこの本を読んでもまったくわからない。
注釈などで、こういう部分のフォローをするのが編集者の仕事だと思うのだが、この本、各回の扉にお題目のイラストと簡単な説明文があるだけ。非常にいいかげんなつくりだ。

私がウィキペディアを見て知った限りでも、“ハチは故主・上野と同じ青山霊園に葬られ、亡骸は本田晋によって剥製にされた”とある。
ネットで本田晋という人を調べてみると、国立科学博物館技官の剥製家(そんな職業があるのかよくわからないが)で、上野の科学博物館の地下室で半世紀近く剥製作りを続けてきた人だということがわかる。ハチ公もそこで剥製にされたと予想される。
ネットでもこのくらいのことはすぐにわかる。だが、この本ではタイトルにある疑問にすら答えていない。

編集者はやる気があるのだろうか? 脱力感に満ちたつくりがウリというつもりなのだろうか?

お題目としてはファミレスとかインスタント麺のようなジャンクなものばかりにしたほうがよかったのでは。

“文化”について“考える”には不適切な人選だと思う。
まあ、タイトルをまともに受け取った私が悪いのだろう。

※番外編の奈良ロケで板尾氏が着ているピンク地で胸に2頭の虎の顔が描かれたジャンパーは、なかなかのセンスを感じさせて興味深かった。私服だと思うのだが、一体どこにいけばあれが買えるのだろう。明らかにヤンキー圏で育ったことで培われたセンスだと思う。
このジャンパーを羽織り、自然な笑顔を見せる松尾氏の写真が見れたことが、この本を読んで一番の収穫だった。