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キム・ハドソンの「新しい主人公の作り方 ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術」

新しい主人公の作り方  ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術

新しい主人公の作り方 ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術

ハリウッド流脚本術でよく援用される「ヒーローの旅」。
それに対して新たに「ヴァージンの旅」を提唱した脚本術の本。
女性の視点から主人公の成長を描くストーリー展開パターンを披露している。
“ヒロイン”でなく“ヴァージン”としているのがポイント。
序文を書いているのは「神話の法則」のクリストファー・ボグラー。
「ヒーローの旅」の脚本術における本家のお墨付きである。
序文では、絶賛とはいかないが、それなりに高く評価している。
著者はスイスのユング研究所まで行って学んだこともあるとのこと。ただ、どの程度のものか詳細は不明。
ということで、キャラクター・アーキタイプの解説、それに関しての自論も多く語っている
アーキタイプ」「ヴァージンの旅」「ヒーローの旅」の3本立て構成の本といっていいだろう。

「ヒーローの旅」は、大まかに言えば、外に出て冒険を経て、敵と戦い、成長するというお話だが、「ヴァージンの旅」は内面的な葛藤を経て成長するとしている。
確かに、ヒーローの旅では捉えきれなかったポイントが「ヴァージンの旅(成長)」とすることで納得できる作品がかなりあることがこの本を読んでわかった。主人公が男性の作品についても「ヴァージンの旅」で解説できる作品はあるとしている。

「ヴァージンの旅」としては「アバウト・ア・ボーイ」「リトル・ダンサー」「ブローク・バック・マウンテン」「エリン・ブロコヴィッチ」「キューティー・ブロンド」「メイド・イン・マンハッタン」「デンジャラス・ビューティー」「プリティ・ウーマン」「天使にラブ・ソングを…」「あなたが寝てる間に…」「ワーキング・ガールズ」などを解説。

「ヒーローの旅」としては「エイリアン」「ビバリーヒルズ・コップ」「ブラッド・ダイヤモンド」「ボーン・アイデンティティ」「マトリックス」「許されざる者」「ウィロー」などを。

ただ、この本は非常に読みやすいのだが、ある程度、「ヒーローの旅」についての解説書を読んだ人に勧めるべき書籍という気もした。
この本だけだと明快すぎてとりこぼしが出そうだ。
あくまでも、「ヒーローの旅」論のおさらい、そして補完とするのがいいではないかと思った。
私自身は、本家のジョーゼフ・キャンベルやボグラーの書籍、大塚英志がいくつも出している物語論などを読んでいなければ、読後、釈然としない思いを抱いたかもしれない。明快な分、若干強引なところもある。

例えばクリント・イーストウッド監督・主演の「許されざる者」を「ヒーローの旅」の観点から解説している部分。

許されざる者」は、そのタイトルにあるように、暴力によって勝利を得る「ヒーローの旅」を、冷徹に正反対の視点から描いた映画。
私はそんな風に思っている。「ヒーローの旅」を反転させたものみたいに。
人を撃ち殺して勝利するガンマンはヒーローとされるが、実際は無法者と同様“許されざる者”ではないか。そう語る映画だと理解している。
私の中ではこの作品は“反西部劇”、もしくはある種のメタ西部劇である。
その「許されざる者」について、この本では以下のように解説している。

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かつてガンマンで、現在は養豚業で平和な暮らしを営んでいた主人公が、カウボーイの悪行で傷ついた娼婦を救うために立つ。そして粗暴な保安官を退治、賞金を得て、カリフォルニアで幸せに暮らす。

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これは強引すぎる。
身も蓋も無いし、これではこぼれ落ちるものが多すぎる。
ここまで型にはまった「ヒーローの旅」にされては、という感じだ。

ただ、いくつもある脚本術のひとつとして、この本を参照するのであれば、明快に整理されている内容だけに役立つ可能性はある。非常にわかりやすく、創作に使えそうだ。
否定的なことを書いてしまったが、買っておいて損はない“使える”本だと思う。ボグラーはまだしもジョーゼフ・キャンベル「千の顔を持つ英雄」は脚本術の本として読むには相当無理があるし。私も上巻しか読んでいない。

とはいえ、個人的には脚本術の本としては、シド・フィールド、リンダ・シガーの著作、ジェームズ・ボネットの「クリエイティヴ脚本術」に及ぶものではなかった。

新城カズマ「物語工学論」よりは使える気がする。

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