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映像、書物、音楽などについての感想

小山宙哉「宇宙兄弟」20〜22巻

20巻

宇宙兄弟(20) (モーニング KC)

宇宙兄弟(20) (モーニング KC)

六太らがバックアップクルーとなったビンセントのチームが月着陸に成功するのがメイン。
一方、次々回の月へ旅立つチームとして六太らの“ジョーカーズ”が候補に挙がるが、かつて、日々人の復帰を阻んだNASAマネジャーのゲイツがそのことに反対、六太の月への道に暗雲がという回。
その回の月ミッションはシャロンの月面望遠鏡が実現する回というのがポイントだ。ほかのミッションでなくこのミッションで月に行かなければならないというカセとなっている。
この漫画としては比較的珍しい“悪役”のゲイツが今後どのように変わるかが読ませどころという印象。どうでもいいことだが、ゲイツ、バルマーという名前の人間は悪役で登場することが多い。そんなことを思った。

21巻

宇宙兄弟(21) (モーニング KC)

宇宙兄弟(21) (モーニング KC)

ゲイツという障害を乗り越えて、月への“任命”を得るために、六太は頭をめぐらせ奮闘する。ゲイツに交渉した六太は、1億ドルの運営コスト削減案を出せば、月ミッションのアサインを約束するという言葉を得る。
一方、ゲイツは経費削減のため、せりかが搭乗予定のISS廃止を画策。“ジョーカーズ”と月ミッションの対立候補NASA内部のアンケートでISS廃止の希望の票を集めさせ、多くの票を集めた方にミッションを任命すると告げる。
それに対しまず、六太は削減案としてコストのかさむ相次ぐ地上での実験を省き、月での失敗覚悟の実地での作業を提案するが、ゲイツは相手にしない。

22巻

宇宙兄弟(22) (モーニング KC)

宇宙兄弟(22) (モーニング KC)

さらに六太は、ゲイツの意に逆らう、ISS廃止ではなく“存続”を希望するアンケート集計を提出。ゲイツは怒って席を立つ。
ただ、その後ゲイツは飲み屋に行って、NASAの先輩である店主と話し、堅実なだけだった自分を変えようと変心。“ジョーカーズ”に月ミッションを任命する。
一方、ISS廃止案はゲイツの力では止められないところまで進んでいた。
というところで、経費削減として宇宙空間での宇宙船メンテナンスの民間への委託プランが浮上する。
そのプランに日本人技術者が絡む。
プロジェクトが進行する中、かつてJAXAで日本人宇宙飛行士候補として六太らと交流した福田、古谷が登場する。

この3巻ともに安定して楽しんで読むことができた。人間関係の広がり、因果のめぐりあわせというのをいい感じに描くのがこの作者の好きなところである。
ただ、このあらすじを書くためにざっと読み返してみると、若干ご都合主義的なものも感じた。ゲイツは物分り良すぎるのでは。
飲み屋に行って、昔の先輩であるマスターに会ったからといって、そんな簡単に長年の主義を変えるものだろうか。
ただ、初回通読しているときにはそのことでそれほどの違和感は感じなかった。
激しい人間のぶつかり合いを描く漫画ではないので、これはこれでいいかもしれない。
読んで気分よくなるための漫画なので。