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映像、書物、音楽などについての感想

映画と漫画「俺はまだ本気出してないだけ」

俺はまだ本気出してないだけ 豪華版 [DVD]

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映画のほうをたまたま見る機会があった。
想像していた以上に“よかった”。
ギャグの誇張した描写もあまりすべることなく、堤真一の演技も私には違和感がなかった。
というか、堤真一がいいので驚いてしまった。
オーバーアクションな演技もすんなり見れて笑えた。
映像としての表現も主人公の心情を目で見える形で推測させる程度にとどめ、
心情吐露的な描写もできるだけ省いたクールな目線で描かれていた。
そして、その描写から浮かび上がる心情、葛藤も共感できるもので非常に好感が持てた。

最近邦画を何本か続けて見たのだが
舟を編む」「キツツキと雨」「横道世之介」「純喫茶磯辺」といった良作と比べても
個人的には引けをとらない映画だった。
個人手な好みの順位だと
キツツキと雨
「俺はまだ本気出してないだけ」
純喫茶磯辺
舟を編む
横道世之介
の順だろうか。この順位にする人は少ないと思うが……

かなり気に入ったので、原作の漫画も読んでみることにした。

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

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俺はまだ本気出してないだけ 2 (IKKI COMICS)

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俺はまだ本気出してないだけ 3 (IKKI COMIX)

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俺はまだ本気出してないだけ 4 (IKKI COMIX)

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俺はまだ本気出してないだけ 5 (IKKI COMIX)

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読んでわかったのが、映画は意外にも、漫画でのエピソードを忠実に映画化していたということ。
大きく違うのは主人公の友人・宮田の元妻と息子との関係についてくらいである。
へヴィーになる最終巻である5巻の内容には触れていない。
漫画のエピソードの時系列を組み替えながら、映画としてコンパクトに仕上げたという印象だ。
私は、なかなかうまく映画化できた作品だったと思った。

漫画についは、私のものすごくおおざっぱな印象では
郷田マモラの画で業田良家の世界が展開していくというという感じだった。
4巻後半から最終巻までの展開は非常に読み応えがあり、心動かされた。
5巻最後に載っていた娘・鈴子の回想から現在に至る流れはちょっと業田良家の「自虐の詩」ぽいところもあった。
だが、こちらはあちらほど、「人生はすばらしい!!!」と声高らかに歌い上げてはいない。

なんだかんだあっても日常は続くというラスト。
粛々と漫画を書きながら「人間てめんどくせえな……」という主人公のつぶやき。
だが、その表情は妙に清々しかったりする。
不細工な中年男なのでその清々しさもビジュアル的には微妙なものなのだが……
そういう所がよかった。
短編集の「俺はもっと本気出してないだけ」も読んでみることにする。

映画も漫画も面白く、好感の持てる作品だった。

あと、この映画では主人公・シズオがバイトで働くハンバーガーショップとしてファーストキッチンが登場する。
こんなぐうたらな男が働く職場なのに、よく撮影に協力したものだと、ちょっと驚きつつも感心した。
ただ、個人的にはドムドム・バーガーのほうが職場としてははまったような気もするが……