読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

スティーブ・ハケットのジェネシス再演アルバム『ジェネシス・リビジテッドII 』

Genesis Revisited II

Genesis Revisited II

以前から、このアルバムのことについて感想を書いておこうと思っていたのだが、ずっと書けずにいた。
だが、『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』を聴いて見て自分なりにわかったことがあったので、記録に残すことにする。
Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

まずはスティーブ・ハケットについて。

エレキギターを持てばサステインとタメの効いたフレーズを悠々と繰り出し、アコースティック・ギターを抱えればウェットで繊細なアルペジオを紡ぎ出す。
世間の流行などまったく関係ないかのように、穏やかに自分の音楽スタイルを貫いている。
色々な活動はしているが、私の抱くスティーブ・ハケッのイメージは、おおむねこんな感じだ。
時代の流れなど意に介さず、揺るぎない音楽的スタンスを長年にわたり維持しているミュージシャン、そんな風に勝手に思っている。

その彼が長年取り組んでいたのが、ジェネシスの音楽の再演。
’96年に『ジェネシス・リビジテッド』(邦題は『新約創世記』)を発表、そのライブを収めた『ザ・トウキョウ・テープス』(‘98年)、ジェネシスの曲と自作曲を混在させた編集版『ジェネシス・ファイルズ』(‘02)を発表してきた。

ジェネシス・リビジテッド(紙ジャケット仕様)

ジェネシス・リビジテッド(紙ジャケット仕様)

Tokyo Tapes

Tokyo Tapes

Genesis Files

Genesis Files

そして’12年に『ジェネシス・リビジテッドII 』 を発表。
昨年’13年にそのライブ公演を日本を含めて行う。
その後CDとDVDがセットになった『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』発表した。
さらに『Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall』(これも日本版はなしでDVDとセット)も発表している。
Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall

Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall

足掛け17年に及ぶプロジェクトである。
こんな取り組みのできる“気の長い”商業音楽のミュージシャンはなかなかいないと思う。
しかも自分が所属していたバンドの曲をである。
時々、再結成してお金を稼ぐバンドはよくいる。
だが、ハケットのようなスタンスで、過去に自分が所属していたバンドの曲に対して取り組んでいる人は、彼以外には私には思いつかない。

ここでハケットが取り上げている曲は、当然のことながら彼が在籍していたときのジェネシスの曲だ。
彼が脱退後、メンバーが3人となりポップな方向に進んでからの曲は演奏していない。
アルバムでいえば『ナーサリー・クライム(怪奇骨董音楽箱)』(‘71年)から『眩惑のスーパー・ライヴ』(‘77年)までの時期である。プログレのバンドとしてのジェネシスの黄金期にあたる。
ナーサリー・クライム(怪奇骨董音楽箱)(紙ジャケット仕様)フォックストロットセリング・イングランド・バイ・ザ・パウンド(月影の騎士)(紙ジャケット仕様)ライヴ(紙ジャケット仕様)ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ(眩惑のブロードウェイ)(紙ジャケット仕様)トリック・オブ・ザ・テイル(紙ジャケット仕様)ウインド&ワザリング(静寂の嵐)(紙ジャケット仕様)セカンズ・アウト(眩惑のスーパー・ライヴ)(紙ジャケット仕様)
ジェネシス・リビジテッドII 』 のライナーノーツについていたハケットのコメントを読むと、彼はこの時期のジェネシスの曲にかなり思い入れがあるようだ。

そして『ジェネシス・リビジテッドII 』で彼が試みていたのは、あくまでもオリジナルの曲の魅力に忠実に、より聴き手を魅了する音楽を作ることだったようだ。

オリジナル曲を電気楽器、音響機器、演奏技術の進歩を踏まえて、アップグレードしたものとして再現することといってもいいのかもしれない。
このアルバムで彼は、リメークとしてオリジナル曲とは似ても似つかないような曲を“創造”することはまったく考えていない。
その点、ピーター・ガブリエルがソロ自作曲に“新しい血(新趣向)“を入れて再演した『ニュー・ブラッド』プロジェクトとは正反対のスタンスにある。ちなみに『ニュー・ブラッド』のライブ『ライブ・ブラッド』は実は私はそこそこ気に入ったのだが、ここではその感想は省く。
ニュー・ブラッドライヴ・ブラッドニュー・ブラッド~ライヴ・イン・ロンドン【日本語字幕付】 [DVD]


以下、『ジェネシス・リビジテッドII 』の感想メモ。

実は私は少年時代はかなりのジェネシス・ファンだったこともあり、ジェネシスの曲を忠実に再現したと評判の『ジェネシス・リビジテッドII 』はかなり楽しみにしていた。
プログレ好きの人が書き込んだアマゾンのレビューの評価も絶賛するものが目立った。

期待して聴いたこのアルバムだったが、わたしの当初の感想は“微妙に残念”なものだった。
演奏、サウンドは“完璧”という言葉を使いたくなるほど磨きあげられた素晴らしいものだった。
ハケットは、ジェネシス・サウンドをアップグレードして再現することを見事に実現していた。
その点では、’96年の『ジェネシス・リビジテッド』とは雲泥の差である。
だが、ボーカルに非常に違和感があった。
オリジナルのテイストを尊重しているサウンドなだけに、声にピーター・ガブリエルフィル・コリンズを期待してしまうのだ。イントロ、間奏はいいのだが、歌が始まるとガックリというパターンが多かった。

結局、私のこのアルバムの印象は、鉄壁な演奏をバックに歌自慢の歌手が次々とステージに登場、そして彼らが、“自慢ののどを披露する”という、“ジェネシスのど自慢大会”という趣だった。

1曲めの「ザ・チェンバー・オブ・32ドアーズ」などは、オリジナル以上にメリハリとタメの効いたドラマチックなイントロなのに、歌が入ると鼻声でヘロヘロのフィル・コリンズもどきの声。
しかもオリジナルはピーター・ガブリエルなのに……
ほかの曲では、歌のコブシまわしがあまりに強く「これは演歌か」と思えるような一節も。
演奏は素晴らしいのだが、歌に違和感があり、素直に楽しむことができなかった。

このアルバムで登場する歌手は歌自体はうまいといっていいのだろう。
だがそれゆえに思い入れたっぷりな熱唱である分、オリジナルとの乖離が生じ、私にとっては非常に困ったアルバムということになってしまった。

そして、このアルバムを聴いて改めて感じたのが、ピーター・ガブリエルの歌手としての表現力。
「サパーズ・レディ」では複数の歌手が入れ替わりで歌っているのだが、オリジナルにとてもかなわない。

ということで、聞いた当初は非常に戸惑った。
ただ、何十回と聴いていると、耳に馴染んでくるのが音楽の恐ろしいところだ。
「これはこれでいいか」という感じ、カラオケのバックを楽しんで聴くようにそれなりに愛聴するアルバムとなった。なんといってもサウンドは素晴らしいので。

日本公演は見たいとは思ったのだが、結局都合がつかず見ることができなかった。

そんなモヤモヤを抱いている間に、
ライブCD&DVD『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』が発表されていた。

正直、それほど期待はしていなかったのだが、この作品のDVDを見てモヤモヤが晴れた。

以下『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』を聴いて、見た感想に続く。

Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

スティーブ・ハケットのジェネシス再演ライブCD&DVD『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』を見た感想