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スティーブ・ハケットのジェネシス再演ライブCD&DVD『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』

Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

Steve Hackett: Genesis Revisited - Live at Hammersmith

ジェネシス・リビジテッドII』は、演奏は素晴らしいのだが、歌についてどうもモヤモヤとしたものが残り、いまひとつ楽しむことができなかった。


『ジェネシス・リビジテッドII』を聴いた感想

だが『Genesis Revisited: Live At Hammersmith』(日本版なし、DVD付き)を見て、印象が変わった。

まずCDを聴いてからDVDを見た。
CDを聴いたときは、あまりピンと来なかった。
まあ、こんなものかという感じだった。

ただ、DVDを見て印象が変わった。
このDVDは、2時間41分になるショーを開演から終演まですべてを収録したものだ。

映像がつくとこうも変わるのかと思った。
素晴らしい内容だった。
ヴォーカルに対する違和感はまったく生じなかった。
CDを聴いたときは、オリジナルのヴォーカリストピーター・ガブリエルフィル・コリンズを意識してしまったが、それはなかった。
ステージを見れば、別人が歌っているのが一目瞭然なのだから。
ただ、それだけのことだが、曲の世界に集中して入ることができるようになった。

そんなわけで、
スティーブ・ハケット・バンド”がジェネシスの曲を演奏しているものとして素直に楽しめた。

私がジェネシスを聴き始めたころは、このバンドの紹介として“英「メロディ・メーカー」誌で年間ライブ・アクト部門連続1位!”というキャッチコピーをよく見かけた記憶がある。

話が少しそれるが、同様に『クリムゾン・キングの宮殿』について“ビートルズの『アビイ・ロード』をチャート1位から蹴落とした”もよく見た。
当時は、そういう紹介文がよくあった(※ウィキペディアによると『クリムゾン・キングの宮殿』のこの紹介は事実でなかったとの記述がある)。

このDVDを見て、本国でジェネシスがそういう風に評価されていたというのは、このバンドの楽曲自体がライブ・アクトで魅力を発揮するものだったからかもしれない。
そんなことを思った。

そして、演奏、歌が非常に丁寧だ。
さらにタメのある演奏、歌の“間”が素晴らしい。

ハケットはステージ中央に立っているが、ほとんど動かない。
うつむいてギターを注視しながらひたすら集中して演奏を続ける。
決して派手な動きのあるステージではないが、私はまったく退屈することがなかった。
じっくりとしっかりと再現される曲の世界に魅了された。

ジェネシスはかつてピーター・ガブリエルのパフォーマンスから“シアトリカルなバンド”と称されることが多かった(リアルタイムで見聞きしたわけではないが)。
だが、実は曲自体も“シアトリカル”なものなのではないかと思った。
展開がめまぐるしく“劇”的で、改めて普通の“歌”としては変な曲が多いと思った。
演奏、歌だけでもドラマのように起伏があり、“間”を楽しむことができる。
このステージを見てそう思った。

例えばニック・カーショウが歌う「ラミア」。
これは比較的普通の曲だが、このステージで展開するカーショウの繊細な歌声と、歌と演奏の間に生まれる“間”は、ため息をつきたくなるほど美しい。
そして、その世界は非常にイギリス的だ(この曲を収録した『幻惑のブロードウェイ』はニューヨークを舞台にした物語だが)。
そういう風情がある。

このステージの映像を見て、スティーブ・ハケットが長年取り組んだ“ジェネシス再演プロジェクト”がひとつの到達点に達したことを確認でき、彼の再構築したジェネシスの世界を堪能することができた。
いいものを見たという気分だ。

余談だが、ひとつ気になったのが肥満体となったジョン・ウェットンの登場シーン。
ウェットンは「アフター・グロウ」を歌うのだが、ステージ全体を見ると彼の歌は若干浮いているようかな感があった。
CDで聴いたときはそれほど感じなかったのだが、彼の野太い激唱は、雑な感もあり、あまりそぐわなかった印象があった。
ちゃんとチェックしていないのだが、この曲に関してはかなり音を差し替えているかもしれない。

Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall』は購入するかは未定。
あまりうまくまとまらなかったが、以上とする。

Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall

Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall