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池田理代子の漫画「ベルサイユのばら」全5巻

この漫画を初めて読んだ。

アニメ、舞台、映画など一度も接したことがないので初めての“ベルバラ体験”ということになる。
読んだのは集英社文庫版の全5巻。

冒頭“この物語は3人の人間を軸とした物語である”という趣旨の説明を読み、あれっと思った。
私はオスカル、マリー・アントワネットが登場する物語ということは知っていた。
だがスウェーデンの貴族フェルゼンが主要キャラとして登場することは知らなかったのだ。

この物語を私なりに一言で述べると

フランス革命前の激動の時代を舞台に、王族、貴族の人間模様、特に主要人物の“愛”に重点を置いて、彼らの“生き様”と“運命”を描いたメロドラマ

ということになるのだろう。

で、以下に簡単な感想を書く。

冒頭には3人の物語と書いてあるのだが、この物語、結局、オスカルに始まり、オスカルに尽きるものだと思う。
ともかく、男装の麗人オスカルの魅力に圧倒された。

登場するキャラクターは、男女を問わずオスカーに恋してしまうのだ。
そして、オスカルはそれに値する魅力、輝きに満ち溢れている。
特にこの文庫版での4、5巻での成人となったオスカルたるや、真・善・美を兼ね備えた神のごとき輝きを放っている。

そしてオスカルは物語で何度も何度も泣く。そして、オスカル以外のキャラクターも泣く。感情表現が、時代がかって大げさなのだ。
ただ、歴史ものなのでさほど違和感はなく、それが物語を盛り上げる。

ポーの一族」を再読したときに、この作品は読んだ人の人生を変えるくらいの力がある、と思ったが、「ベルサイユのばら」も同様の力を持つ作品だと思う。
そして、こちらのほうが大きなヒット作となる大らかさがある。
時代考証的なことは私にはわからないが、作品の完成度としては突っ込みどころがある気もする。
だが、オスカルという突出したキャラクターを生み出したということにおいてこの作品が名作であることは間違いないと思う。
それぐらい、オスカルはすごい。
ただ、オスカルがいなくなってからの物語は、個々のキャラクターの力が失われ、ダイナミックさに欠ける展開になったのが残念なところだった。

私の漫画経験で、昭和の漫画において一番のスターは誰かと言われたら、今の私はオスカルを挙げることは間違いない。
少年時代に読んでみたかった。

池田理代子の別作品も読んでみることにする。