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見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

池田理代子の漫画「オルフェウスの窓」全9巻

私は少女漫画はさほど読んでいない。
読んだのは「24年組」や"男性でも読むような"少女漫画だけだ。
なので少女漫画について語るだけの見識はないのだが、この作品について思ったことを書かせていただく。
記録しておかないと忘れてしまうので。

池田理代子先生のことは、名前はもちろん知っていたが作品は読んだことがなかった。
私の中で池田先生は"男性でも読むような"少女漫画を描く人ではなかったからだ。

先日「ベルサイユのばら」を初めて読み、意外なほど心動かされた。
池田先生のほかの作品を読んでみようと思った。
有名な作品として「オルフェウスの窓」があることを知り、入手した。
読んだのは集英社文庫全9巻バージョン。
以下、感想メモ。

読んで驚いた。
ベルサイユのばら」以上だった。
まるで大河小説のような壮大な世界に魅了された。

宿命に翻弄される男女の愛と人間模様、
絢爛豪華な貴族社会の描写、
それぞれの魅力を放つ多彩なキャラクター。
軸となるのは愛と革命と音楽。
それらが華麗な絵巻物のように展開していた。
ナルシスティックで華美な絵でつづられる少女漫画ではあるが、それを超える確とした世界が構築されていた。

ここまで世界を作り上げた漫画はあまり読んだことがない。
比類ない境地に達している作品だと思う。

ベルサイユのばら」は勢いで描いた若書き的なものも若干感じた。
だが、こちらはじっくりと描きこんだ入魂の作品という印象をもった。
関連本の「オルフェウスの窓 大事典」で池田先生は以下のように語っていた。

オルフェウスの窓大事典―連載開始30周年記念

オルフェウスの窓大事典―連載開始30周年記念

ベルサイユのばら」は私の代表作だけれど、『オルフェウスの窓』はライフワークなんですね。だから頑張ったんです」

なるほどと納得した。

また、池田先生は、発表当時に「最後の少女漫画」とこの作品について語っていたそうだ。

確かに、こんな時代がかった、ナルシスティックな美意識の発露たる作品は
当時の少女漫画の世界でも少なくなってきていたのだろう。

「最後の少女漫画」である。

まるでクリント・イーストウッドが「許されざる者」を発表したときに
「最後の西部劇」
と語ったときのようである。

ちみなに文庫版のあとがきには
大島渚辻井喬(堤清二)、江國香織篠沢秀夫三枝成彰らがなかなか面白い文章を書いている。わかぎえふという人の書いた文章は個人的にはちょっと的外れではないかとは思ったが……

読むべき価値のある漫画だと思う。
娘にも読ませたいと思う。

個人的には“愛”よりは“音楽”についての部分が興味深かった。
作中に実在のピアニスト、バックハウスが登場したのには驚いた。
池田先生はバックハウスのピアノがお好きなようだ。

この作品の続きをいつかぜひ書いてほしい。
外伝と同様、ほかの人の絵でもいいので。

オルフェウスの窓 外伝 (YOU漫画文庫)

オルフェウスの窓 外伝 (YOU漫画文庫)

池田先生によると、この物語の主人公は本当はイザークで、
当初の構想ではこの作品の後、
第一次大戦後のナチス台頭の時代に、ピアニストとしての道を断たれたイザークが大作曲家になり、バックハウスの元でピアノを学んだ息子が登場する話を考えていたというのだから。