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見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

皆川亮二の漫画「ARMS」全22巻

昨年、皆川亮二による「PEACE MAKER」を読み、ほかの作品を読んでみようと思っていた。
ということで、代表作でもあるらしいこの作品を読んでみた。
読んだのは少年サンデーコミックススペシャルで全22巻。
後でワイド版も出ていることを知った。
画力のある人(キャラクター描写を除く)なので、そっちで読んだほうがもっと楽しめたかもしれない。

正直、現時点での「PEACE MAKER」と比較するとコマ割り、漫画話法はまだ発展途上なものも感じた。
ただ、世界を創造し、そこで展開する物語を構成していく強い力を持つ作家であることはこの作品からも感じられた。
週刊誌連載で22巻になる大長編作品を想像力を駆使して描き上げ、ちゃんとラストまでもっていくことは相当な"力"のある作家でなければできないだろう。

作者の創作への強い熱意が全編から伝わり、読んでいて非常に心動かされた。
読んだ感想としては、この時点での作者のすべてを出し尽くした作品という風に思えた。
主に通勤電車の中で読んだのだが、壮大で濃密な作品世界にはまり込んだ。

非常に密度の濃い長編作品なので通読した今の時点でこの作品を簡単に語ることはできないのだが、一応感想の記録を残しておく。

登場人物の高槻涼、新宮隼人、巴武士のトリオの名前は、「ゲッターロボ」の流竜馬、神隼人、巴武蔵から取ったのかもと思ったが、読後にウィキペディアを見るとその指摘があった。

作者は'70年代に少年サンデーで連載されていた石川賢の漫画「ゲッターロボ」が好きだったのかもしれない。

漫画読者としては永井豪世代である私は、石川賢の作品も好きで「ゲッターロボ」も愛読していた。
漫画版はアニメよりずっとシリアスでハードな内容だった。と微かな記憶がある。
ただ、作品についての具体的な記憶はほとんど残っていない。
たしかオリジナルの「ゲッターロボ」はきちんと完結せずに、その後ダダモレ的に石川も含めたダイナミックプロ関係の作家が"ゲッターロボ"シリーズを各誌で描き継いでいったような記憶がある(未確認)。

かつて石川賢が「ゲッターロボ」を連載していたサンデーで、そのモチーフも若干受け継ぎ、数十年後にその登場人物から名をもらった新しいキャラクターが物語をつむぎ、最後まで完結させた。
そのことを思うと、ちょっと感慨深いものがある。

で、内容について書けるところだけ書いてみる。まとまりそうもないが。

この作品はかなり本格的なSF作品である。
時系列を整理して言えば、こんな感じの話である。



題材となっているのは、古くからSFで取り上げられているケイ素生命体。
そのケイ素生命体がかつて地球に飛来していたことを前提とした物語だ。
この物語では“金属生命体”アザゼルと名付けられている。。
人間により地中から掘り起こされた岩石のような形状のアザゼルは、突然、表面が人間の顔に変形するなどの動きを見せ、触手を伸ばして人間との融合を試みてくる特徴を持っていた。
そして、その触手につかまれた人間は一瞬で石化、ボロボロになり崩れ落ちてしまう。

優生学を信奉し、優れた人類を生み出すことに執着する科学者キース・ホワイトと権力者による秘密組織エグリゴリは、アザゼルの特性の研究を始める。
その目的はケイ素生命体の強さを兼ね備えた超人類を生み出すことだ。
彼らは非人道的な人体実験の結果、金属生命の侵食に耐えうる適正者、アリスと名付けた完全適応者を生み出すことに成功する。

アリスは少女ながら並はずれた知性を持ち、やがて9歳にしてアザゼル研究プロジェクトの中心人物となる。
金属の強固な体をもつシリコン生命体であるアザゼルは、脆弱な炭素系生命体である人類がもつ"心"を持っていなかった。
アザゼルは人類の持つ"心"に惹かれて人間を取り込もうとしていたのだ。
アリスはそのことを見抜き、アザゼルに心を持たせようと学習プログラムの実験を始め、自身のデータを取り込ませていく。
だが、アリスは狂信的な進化論者のキースに反抗したことが元で、絶望の中で凶弾に倒れる。
アザゼルはそんなアリスを取り込み融合。
そしてオリジナルARMSと呼ばれる4つの"コア"を生み出す。

一方、キースは自身のクローンを作成、みずからの意志を受け継ぐ者として人類と金属生命体を融合させた超人類を作ることにまい進していく。

やがて4つのコアは、キースのクローンで金属生命体との不適合者、キース・ブルー、そしてアームズ適合受精卵とともに、エグリゴリの方針に反対する組織に連れ去られる。

そこから生まれたオリジナルARMS適合者である4人の人間、先の3人の男子に久留間恵という少女、そして久留間恵と遺伝子上のつながりを持ち、主人公・高槻涼の幼馴染・赤木カツミを物語の大きな主軸として物語が展開していく……。

という趣向になっている。

非常に読み応えのあるストーリーだ。
物語は4人の少年少女の成長の話であり、上記の設定は物語の展開とともに明らかになっていく。

そして絵柄、暴力描写は少年サンデーよりはビッグコミックあたりのほうがしっくりくるものとなっている。
映画ならR-15指定の描写だと思う。


この作品は5部構成となっている。

第一部「覚醒編」戦いへのいざないと主人公の幼馴染の衝撃的な死
第二部「邂逅編」新たな仲間とのさらなる戦いと広がる謎、スケールアップしていく物語
第三部「進化編」アメリカ大陸編、苦難の連続
第四部「アリス編」クライマックスとなるニューヨーク決戦
第五部「帰還編」大団円に向けての最後の戦い

個人的にはダレ場はなかった漫画だった思う。
特に多くのボリュームを占めている進化編、アリス編は非常に高いテンションで休む間もなく物語が進んでいく。

ただ、逆にある程度の"休憩"がないことで緩急のメリハリに欠けてしまうところがあるので、作品のすごさに無感覚になってしまうところも通読している際にはあったような気もする。

私の中で漫画史上の傑作といえるのかは、現時点では判断ができないが、またいつか再読してみたい作品だった。
生涯で読んだ漫画のベスト200には間違いなく入ると思う。

ただ、「PEACE MAKER」と同様に気になった点があった
登場キャラクターの表情などの描写だ。
これだけはこの作家の弱点ではないかと思う。
顔の造作の描写も安定していないというのも気になった。
漫画の場合、登場人物の顔が連載が続くに連れて変わることはよくあるのだが、この作品はかなり安定していない。
主人公の顔も個人的にはあまり格好よくはなかった。
ストーリー構成、構図などはかなり好みなのでその点だけば残念だ。
だが、それもこの作家の個性ということなのだろう。

とりとめもないが、とりあえずこのあたりで終える。
うまくまとまらなかったので、時間を見て更新できればと思う。

アニメ、ゲームについてはまったく知らない。
基本的にそちらには興味がないので今後、見ることもやることもないような気がする。

この漫画家の作品は引き続き読んでいくことにする。

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