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見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

柳下穀一郎による2010年代公開の邦画評「皆殺し映画通信」

皆殺し映画通信

皆殺し映画通信

2010年代に公開された日本映画で“ほころび”の目立つ映画76本を取り上げ、著者が突っ込みを展開した映画評論集。
有料ブログの記事を加筆して書籍化したものらしい。

著者は序文の「知られざる日本映画の深層をゆく」で以下のように語っている。
引用させていただく。

P2-P3 世の中にはあなたの知らない日本映画がある。日本で日本人が作っているものでありながら、ひょっとしたら映画業界の人間ですら存在を知らないような映画が。
それなりに名前の知れた映画俳優が出演しているにもかかわらず、誰も見ていないような映画が。
予告編と宣伝コピーで見たような気になっているが、実は想像もしていなかったようなとんでもない内容の映画が。
ぼくはたまたま、そんなことからそういう映画の存在に気づいてしまった。
もちろんぼくとてたまたま出会ってしまっただけで、その全容を知っているというつもりはないし、そんなだいそれた野望を抱いているわけでもない。
ただ、知ってしまったからにはもうちょっと探求してみたいというやむにやまれぬ衝動が生まれてしまう。
そして知ったからには人にその結果を伝えずにはいられないのである。
そういうわけで有料ブログとしてはじめたのが『皆殺し映画通信』である。
元々ぼくには誰もみたことのない映画、見るのをはばかられる映画となるとつい映画館に足を向けてしまう悪癖があった。
そこには我々凡俗の常識を超えた、新たなる超越の論理があるような気がしてしまうのだ。
ときにそれはおとずれ、稲光となって我々を打ちのめす。

私は特に映画好きではないが、この言葉には非常にシンパシーを感じた。
私の経験でも、例えば「幻の湖」「北京原人 Who are you?」といった映画は単につまらない映画という枠を超えて、私を“稲妻のように打ちのめした”。

幻の湖[東宝DVD名作セレクション]

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北京原人 Who are you? [DVD]

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とんでもないものを見てしまったと思った。
単に稚拙ということで片付けられない妙な魅力を私はこれらの映画から感じた。

そういった意味で期待を抱いて読んだのだが、中身はその期待を上回るものではなかった。

この評論集、一言で言えば、
車寅次郎ではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」
という内容だ。
“身も蓋もない”といってもいいかもしれない。
フィクションというものは“お約束”を暗黙の了解のものとして楽しむものだと思う。
ただ、この評論集では突っ込みどころを求めるあまり、そのお約束の部分についても整合性のなさを取り上げ、やり玉に挙げていたりする。
要は面白がることよりも、批判することに文の主眼がいってしまっている感があった。
著者について私は詳しくないが、文化的な教養は高きところから低きところまで備えている人のようだ。
そして本質的に真面目、テキトーでない人なのだと思う。
そのような人だけに、ストーリー展開の詳細な記述をし、突っ込みどころを整合性を持って展開している。
結果、面白がるより、突っ込みどころの詳細な指摘に終始してしまう。
そんな展開が多かった。
インテリが書いたものだけに、それほど笑えない。
一言で言えばそんな本だった。

ただ、興味深い指摘は多くあった。
それを記述しようかと思ったが、既に読んでから1週間以上経っているので記憶が薄れてしまい、書く気が失せてしまった。

カエルカフェについての記述は知らなかったので興味深く読んだ。
カエルカフェの映画に毎回お金を出して劇場まで行くということはなかなかできないことだ。
感心した。

トンデモない映画の突っ込みどころを確認するためには役立つ本だと思う。
ただ、それが何の役に立つかは、私は知らない。

第2弾「皆殺し映画通信 天下御免」も出ているので気が向いたら、そちらもチェックしてみたい。
著者には申し訳ないが、図書館で借りて!

皆殺し映画通信 天下御免

皆殺し映画通信 天下御免