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見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

庵野秀明脚本・総監督、樋口真嗣監督による映画「シン・ゴジラ」

アニメ好きではないが、テレビ放送時に「エヴァンゲリオン」は見ていた。
すでにいい大人になっていたが心打たれるところもあり衝撃的な作品ではあった。
結局、旧劇場版も新劇場版も見ている。

初めて「エヴァ」を見た時は、実質的作者である庵野秀明に何か特別な才能、表現技法があるように感じた。

ゴジラ」の久々の日本版企画が進行中と知り、初めは山崎貴あたりが監督をするのではと思っていたので、庵野秀明が(総)監督と聞き、どんなものになるのかとちょっと期待をしていた。
作品の評判を聞く前に見ようと、今日、会社を早くあがり夜の上映で見てきた。

以下、作品を見ての感想。

ゴジラ映画は多分3分の2くらいは見ていると思うが、シリーズの中では異色の内容だった。
エンターテインメントの怪獣映画としてのお約束を無視した、庵野氏のテイストが前面に出た作品になっていたと思う。

今回のゴジラの造形はゴジラ史上、最も“気持悪い”。
造形的に“怖いがかっこいい怪獣”とは一線を画している。

ゴジラというと鋭い目つきが特徴だが、今回のゴジラの目はかなり違う。
特に第一形態のゴジラの目はものすごく気色悪い。
第一形態のゴジラが画面に登場してうねうねと這い回る姿は、気持悪さを感じると同時にぬいぐるみのような見た目が滑稽でもあり、思わず笑いそうになってしまった。
“最終形態?”のゴジラとなってからも従来の怪獣とは違う造形だ。
目も小さく従来のものとはまったく違う。
こちらもある意味気持ち悪い目だ。
巨体とのバランスを欠いた異常に細く短い腕も“変”だ。

おおばっぱにいうと外面的にゴジラは「エヴァ」に登場する“使徒”のような存在となってしまっているのだ。
メタモルフォーゼの描写、全身から破壊光線を狂ったように放射するところなど、見た人はエヴァンゲリオンとの類似性を大いに感じるはずだ。
凝固剤により立ち尽くしオブジェと化した姿も、既視感がある。
ほかにも彷彿とさせるカット、シーンが多数登場する。
そして音楽。
エヴァンゲリオンを複数回見たことのない私ですら、そのことを強く感じた。
結果としてこれは好事家を刺激するエヴァのプロモーションとなるのかもしれない(おそらくそれも狙ってはいるのだろう)。

作品全体としては、アニメをそのままリアルな俳優が演じた実写作品に置き換えたような作品、という印象を抱いた。
ただ、それならゴジラにしなくてもいいのでは、
実写にしなくてもいいんじゃないのか、という気もした。

この作品が“ゴジラ”である意味はないのではと思った。
ゴジラがあって作品がある、でなく庵野印があってゴジラがあるという感じだ。


大規模な海外での公開が予定されているようだが、前半の延々と続く平板な芝居がネックとなってエンターテインメント作品としては海外に通用しないような気がする。

日本映画としては予算のかかっているであろう作品で自分のスタイルを貫く庵野秀明という人はすごいな、とは思うが、
ゴジラ映画”としては邪道ではないかというのが見た感想だ。
これなら山崎貴監督による“人情味”も加えたゴジラ映画のほうが王道的作品になったかもしれない。

ゴジラ映画も色々あるので人それぞれの好みはあると思うが、シリーズで私が好きなのは第1作を別とすると、
子供向けSF怪獣映画としてのドキドキ感を味わえた大森一樹監督の「ゴジラvsキングギドラ」、
第1作への強い思い入れを感じた東宝の監督、大河原孝夫による「ゴジラvsデストロイア」だ。

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新でも真でも神でどうでもいいが、「シン・ゴジラ」は私が求めている怪獣映画のカタルシスを得ることのできる映画ではなかった。

文章は読んでいないがネット上の見出しでは“大傑作”とか書いているものも多い。
?という感じである。
そういうプロモーション戦略に基ずく記事なのだろうか?
こき下ろす気はないが、いくらなんでも大傑作ではないでしょう。