見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

「パウル・クレー おわらないアトリエ」



今回のパウル・クレー展は特定の視点から作品を捉えて解説をつけるという企画色の強い展示会となっていた。

興味深かったのは
1.1940年に60歳で死去するまで5つのアトリエを持った彼の、それぞれのアトリエでの作品群の紹介。
2.ただ描くというのではなく、自作を切って、それを逆さやずらしてつなげる、両面に絵を描く、絵の上に絵を塗りこめる(意図的に)など、創作上の独特の手法に注目してクレーの作品を読み解こうとした点。


クレー自身がアトリエごとに自分の作品の時代を意識して、自作をアトリエに展示してそのアトリエの記録として写真を撮影していたといことが興味深かった。

さらに、最期のアトリエとなったベルン時代の作品は、ナチス台頭以降の時代ということもあり不気味でペシミスティックなものが感じ取れる作品が多かったように思う。

以前から気になっていた絵「来るべき者」の実物を初めて見た。
写真とまったく違う質感だった。実物の質感に魅了された。
この作品は1933年にベルンで描かれたものだった。
1933年はヒトラーがドイツ首相となり、国会議事堂放火事件が起こり、ドイツがナチス独裁体制になっていく年だった。
この絵を見るとなぜか心がザワザワとしてくる。