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ベンジャミン・フルフォード「図解 世界『闇の支配者』」

謀略本の人気作家ベンジャミン・フルフォードが「闇の支配者」説を写真、イラスト満載で解説した本。
「闇の支配者たちが仕掛けたドル崩壊の真実」が意外と面白かったので、図書館で借りて続けて読んでみることにした。
私はちゃんと認識していなかったのだが著者によると“イルミナティ”という言葉が闇の支配者たちを意味するようだ。

ただ、この本でのイルミナティの定義が非常にあいまいで、
14世紀にドイツで設立された秘密結社イルミナティから由来しているようだが、
旧約聖書バベルの塔を建設、神の怒りをかって滅ぼされたニムロデ、さらには古代アトランティスをも起源としているものもあるとのことだ。
時代背景、民族、理念、利害関係もまったく異なる集団をイルミナティという言葉でくくるのは、無理が過ぎるように思えた。

この本を開くと「はじめに」と題された、大きな文字による著者の文章が見開きで載っているのだが、そこにある1枚の写真がケッサクである。
そこには著者ベンジャミン・フルフォードと“闇の支配者”の大御所デビッド・ロックフェラーの2ショット写真がでかでかと載っている。
告発している著者と告発されている“闇の支配者が”親密そうに、なごやかな表情で写っているのである。
「はじめに」の最後に
「ただ私は、本書の内容に命を張ってもいいと思っていることを伝えておきたい」
と書いてあるのに、
その切迫感が著者と並ぶ闇の支配者・ロックフェラー氏のあいまいな微笑でだいなしである。
妙なつくりの本だ。

以降、見開きごとに「FRB」「フランス革命」「イギリス王室」「9.11米国同時テロ」など項目立てでイルミナティの謀略を解説する記事となっている。
だが、写真、イラストが満載なために、その分情報量が少なくなり、いきなり断定で論が進んでいくので、謀略本に詳しくない私にはちょっとついていけないものがあった。
納得する前に話がどんどん進んでいく。
怪しげで謀略本的な体裁は眺めていると楽しいのだが……

著者は、闇の支配者として5つのグループをあげている。
1.ロックフェラー一族(アメリカ 石油、金融利権)
2.ロスチャイルド一族(ヨーロッパ 金融を中心にした企業集団 ユダヤ系という言葉は基本的にない。この本を見る限り、著者はユダヤ陰謀説的な主張はしていないようだ)
3.英王朝(イギリス ドイツ系のウィンザー朝 エリザベス女王を代表とする)
4.ブッシュ一族(アメリカ 石油、軍産複合体 ブッシュ大統領親子、この親子を著者はそれぞれパパブッシュ、ベビーブッシュと著者は呼ぶ)
5.ローマ法王(バチカン市国 カトリックの総本山)

そしてそれぞれ闇の支配者の写真が数多く載っているが、そこにつけられている見出しがすごい。

ローマ法王ベネディクト16世「ワル」「カトリック教会を意のままに操り、世界を動かす!」
パパブッシュ「ビン・ラディン一家とは家族ぐるみの付き合いさ」「稀代の大悪党」「悪魔親子」「第四帝国を狙う新たなナチ=ブッシュ家」
ベビーブッシュ「不肖の息子」
ジョージ・ソロス(ロスチャイルドと深い仲とのこと)「同族経営をやめて俺たちに儲けさせろ!」
デビッド・ロックフェラー「ジャパン・マネーを吸い上げろ!」
ジェイ・ロックフェラー「日本は俺のものだ!」
ヒラリー・クリントン(イルミナティ自体に属しているのではないようだが)「魔女」
名誉毀損で訴えられても不思議ではない断定ぶりだ。

読み終えた感想は、イルミナティとされるグループ全体の歴史、活動について、
独断と推論が過ぎる内容に思えた。

嵐や地震も起こすことができるという、電磁波発生装置ハープの解説もある。
さらには南極下の秘密基地、人類洗脳計画、錬金術、UFOも登場する。

巻末に参考文献の欄がある。
この本は、いったい何を参考文献にしたのだろうと思い、それを眺めて驚いた。

14冊のリストがある。
その著者が全て、ベンジャミン・フルフォードなのだ!

自著の参考文献が自著?
しかも「※その他、多くのインターネットのウェブサイトを参考にした」の文字が。
自著とウェブ情報で作られた本。
事実検証皆無なのか……
まさにトンデモ本である。

というか、これはもしかして参考文献をもとにゴーストライター(扶桑社編集部)が書いたもの
ということを示しているのかもしれない。

この著者の本は、トンデモ指数の高いものと低いものがあるのかも。
この本のトンデモ指数は高めです。

図解 世界「闇の支配者」

図解 世界「闇の支配者」

この本に登場する、発明王エジソンとライバルにあったというニコラ・テスラという人物に興味を持った。
彼に関する本は機会があれば何か読んでみたい。
トンデモ本でもないものを。
新戸雅章という作家が色々と書いているようなのでチェックしておくことにする。