見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

副島隆彦、佐藤優「暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠」

ベンジャミン・フルフォードと並ぶ日本における陰謀論の人気作家・副島隆彦
外務省出身の異能作家・佐藤優が、2008年に対談した本。

詳細な目次なので章立てだけを以下に書く。

                                                                                                                • -

序章 アメリカ大統領に隠された真実
第1章 アメリカ・ドル覇権の崩壊で「恐慌化」する世界
第2章 秘密結社の実像―西欧を動かす民族意思と宗教
第3章 ロシアの野望と裏で操る2大勢力
第4章 グルジアで発火したロシアとアメリカの「熱き戦争」
第5章 劣化し、暴走を始めた日本の行方

                                                                                                                  • -

対談が行われたのはサブプライムローン問題が波及、リーマンショックなど金融危機が広がっていた時期。
目次の後、本文が始まる前に見開きで副島、佐藤が向かいあう写真が載り、
佐藤の「私は、プーチン、メドヴェージェフ体制が推進するロシアは、2020年までに帝国主義をめざすと考えてます」
副島の「オバマは経済政策に失敗して2年くらいで辞任するでしょう。そのあとはヒラリーが大統領になります。こんな大胆な予言をして大丈夫か、と言われても私は構いません」
の大きな文字。
オバマが2年で辞任するかは別として、この2人の見通しは大きな部分ではそうずれてはいないように思える。

で対談の内容だが、かなりとっちらかったものではある。
大意としてはアメリカ=ドル体制の崩壊、その裏に支配者としているデビッド・ロックフェラーのこと、デリバティブのこと、アメリカにおけるポピュリスト、リバータリアニズム、ユダヤ人のこと、新興勢力BSICsのこと、ロシア周辺の事情などなどが語られている。ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟」の“大審問官”エピソードについてもかなりの文字数を使っている。

放言としてはこのあたりが興味ぶかかった。

                                                                                                                                  • -

副島「鈴木宗男事件というのは、たぶんアメリカが仕組んだ。アメリカとしては『北方領土をいじらせない。返還もさせない。日本とロシアを絶対に仲良くさせない』という意思がある。それに抗った鈴木さんと佐藤さんが犠牲になったのだと思います」
佐藤「僕は、鈴木さんの件をこう考えています。アメリカという表象を使った人が外務省にいたことは間違いありません。ただし、赤坂のアメリカ大使館が誰かに、『鈴木を撃ってこい』などと命じたことはなかったと思います。おそらくアメリカの意向を過剰忖度した外務官僚が、自発的に行ったのでしょう」
副島「〜いや、一番上のところはの決断は、有力政治家がやってますよ。親分であるアメリカの意を体言して『今日は天気が悪いな』と言うと、そのひと言を聞いて、相手を刺しに行く。そういう政治家がいるのです」(P230〜P232)
副島「佐藤さんと鈴木宗男さんを逮捕して『まず2島返還論』がまるで売国奴の外交だと思い込ませた連中がいましたよね。そして佐藤さんたち本当の愛国派の行動を潰したわけです。彼らは『4島一括返還以外は絶対に呑まない』という態度を取ることが、まるで日本民族主義者の愛国派としての大正義だというふりを今も続けています。ところがこの人物たちこそは、裏で深くアメリカに操られている人たちだ。私はそのように確信しています」(P234)
副島「どうして小沢一郎民主党代表(当時)は潰されないのか。〜私は、それは前述したジェイ・ロックフェラー(デビッド・ロックフェラーのおいでむしろ血筋としてはこちらが盟主、デビッドと反目している)がついているからだと考えています。〜小沢革命のときに出版された『日本列島改造計画』の序文はこのジェィ・ロックフェラー上院議員が書いています。〜すなわち、私が自著に書いてきたとおり、小沢一郎こそは、アメリカが選んだ正当の日本国王なのです。〜ジェイ・ロックフェラーはゴールドマン・サックスの真のオーナーです。前述したようにロックフェラー家の跡目(家督)を本家である自分に戻させようとしています」(P237〜P238)
副島「小沢代表が次の政権の総理になってほしいと私は思います。しかしどうも健康がすぐれない。〜小沢亡き後の日本の方向を考えなければいけません。民主党内では小沢の後継者はやはり岡田克也副代表でしょう。〜ポスト小沢は岡田克也副代表でよいと思います。岡田克也の父である卓也のイオン・グループは三井ロスチャイルド系でしょう。欧州ロスチャイルド系は、ジェイ・ロックフェラーと組んで“帝王”デイヴィッドに対抗しています。」

                                                                                                                                  • -

この対談、オバマ大統領誕生前、日本の民主党政権になる前に書かれたものだ。
この対談以降、世相は変わったが、現在にも通用する部分もあり、それなりに興味深く読めた。

やはり副島隆彦という人はなかなか面白い(変な人という部分も含め)。
ベンジャミン・フルフォード陰謀論のジャーナリストなら
副島は陰謀論の思想家といったところだろうか。

副題の国家による統制ネオ・コーポラティズムについては、今までに話したように、そのような流れが進みつつあるとの言葉くらいで、特に深くは言及していない。