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スティーブン・ダルドリー監督、トーマス・ホーン主演、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック出演の映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」

同名の小説を「フォレスト・ガンプ 一期一会」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生 」のエリック・ロスがシナリオ化。
監督は「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」のイギリス人監督、スティーブン・ダルドリー。

9.11を背景に、テロで死亡した父親と息子の絆を描いた映画、
といえるのだが、
それにとどまらず、映画の中ではさまざまな情報が濃密に展開する。

メイン・プロットは、
死んだ父が残した謎めいた鍵を見つけた少年が、その鍵が合う鍵穴を見つけることができれば何かが変わると思い込み、ニューヨークを歩き回り、さまざまな人々と交流する話。
ということになると思う。

ただ、そこにさまざまなサブ・プロット、エピソード、少年を取り巻く事情、背景などが本編129分の中にびっしりと埋め込まれている。
しかも説明的でなく自然に。
これは脚本家と監督の力によるものだろう。
この映画、何回か見たほうがいい作品かもしれない。
新たに見えてくる部分もありそうだ。
非常に複合的で奥深い作りになっていると思った。

ドレスデンの逸話とかでは、筋からはずれるがカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」を思い出してしまった。

さまざまなことが描かれているので、
メインの父と子の絆に涙する内容ではあるのだが、
見た人により、心引かれる部分、感動する部分も違う気もする。

私は個人的には
セレンディピティというものが、物語の中に生き生きと埋め込まれた、秀作だと思った。
心の底から求め続ければ、思いがけないところから奇跡的なめぐりあわせが生まれる、みたいな。
そんなところに心打たれた。
そんなことが作為的に感じられない演出で描かれている。

それが何であるかはここでは書きません。見た人が感じるかどうかだと思うので。

スティーブン・ダルドリーはいい感じでキャリアを積み上げてきていると思う。


原作の小説も読んでみたい。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

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これを書いた後で、どうもこの作品について感じたことを言葉にできなかった、何か引っかかるものがあり、それが何なのか自分でもわからないので、他の人のブログの感想も読んだ。
原作を読んだ人はかなり思い入れがあるようで、この映画には厳しい評価が多かった。
エリック・ロス脚本ということで否定的な人もいた。
彼の脚本にはあまりうまくいってない作品もあるが、私は嫌いなタイプではない。
スティーブン・ダルドリーの作品も嫌いなタイプではない。

原作を読んだ上で、またこの作品について考えてみたい。
合点がいくところがあったら更新することにする。

でも、私は、原作と映画は別ものになってもまったくかまわないと思う人だ。
いい作品になってればいいじゃん、という感じだ。