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映像、書物、音楽などについての感想

シャーリーズ・セロン主演、ジェイソン・ライトマン監督の映画「ヤング≒アダルト」

どういうわけか2世監督という存在が増えてきたような気がする。
日本では今村昌平の息子・天願大介深作欣二の息子・深作健太蜷川幸雄(監督が本業という感じではないが)の娘の蜷川実花
ハリウッドではフランシス・フォード・コッポラの娘、ソフィア・コッポラ

イギリスのケン・ローチ監督の息子ジム・ローチも監督になっているという。
さらに言えばデビッド・ボウイの息子のゾウイもダンカン・ジョーンズ監督として名を成しつつある。
彼の第2作「ミッション:8ミニッツ」は見ていないが、いずれ見たいと思っている。

そして今作のジェイソン・ライトマン
イトマンで分かるように、「ゴーストバスターズ」の監督、アイヴァン・ライトマンの息子である。
有名な南カリフォルニア大学で映画を学んだようだ。

今回初めて彼の監督作を見た。なんとなく時間が空いて見たという感じだ。

例によって映画についての前情報はなしで見た。

で、感想なのだが、世代的にシャーリーズ・セロン演じる主人公よりは自分の年代が上であるせいか、あまり乗れずに見終わってしまった。

主人公はミニクーパーを運転して故郷に向かう。
そのときに、ある曲をかけて気持ちよさそうに大きな声で歌っている。
どこかで聴いたことのある曲と思っていた。

調べるとクリエイション・レコードに所属していたイギリスのバンド、ティーンエイジ・ファンクラブの「ザ・コンセプト」という曲だった。
彼らのセカンド・アルバム「バンドワゴネスク」の1曲目だった。

バンドワゴネスク

バンドワゴネスク

この頃のティーンエイジは私も聴いていた。
彼らの素朴でナイーブな音楽は嫌いではなかった。
ただ、特に強い思い入れはない。
「バンドワゴネスク」が発表されたのは'91年。
約20年前のことだ。
おそらく10代の“多感な”時期にティーンエイジ・ファンクラブを聴き、入れ込んだ人ならこの映画には心動かされるのかもしれない。
そして監督のジェイソン、脚本のディアブロ・コーディ(「JUNO/ジュノ」の脚本も書いている)も10代のときにティーンエイジを聴いていたのかもしれない。

私は世代の違いもあり、主人公への感情移入はできなかった。


ただ、疑問に思ったのだが、この曲ってそんなに有名だったのだろうか、ということ。
主人公はアメリカの田舎町でかつての“学園の女王様”的な存在という設定だった。
そんなアメリカ人が、ティーンエイジ・ファンクラブを聴く?
オアシスでもイメージしずらい。

さらに、この映画では主人公と反目するかつての同級生たちが、バンドを組んでこの「ザ・コンセプト」を町の住人に披露している。
ちょっと変ではないか。
主人公が好きな曲を偶然、趣味が違った同級生がバンドで演奏しているのだ。
そんなに有名でない曲を。
気になったのでウィキを見たら、「バンドワゴネスク」のチャートアクションは全米137位だった。
無理がある設定なのではないだろうか。
この曲、歌詞にステイタス・クオーというイギリスの“老舗”ロック・バンドの名前が出てくるのだが、アメリカの片田舎でこのバンドのことを思い入れたっぷりに歌う曲が流れているというのはアメリカの音楽市場のことに詳しくない私からしても非常に違和感がある。
ちょっと作者側の思い入れがずれたお話なのではないかと思う。
世代の違う人間を引き込む普遍的な力には欠けている感がある。

現実から飛躍するのが映画の妙味だと思うが、この映画での飛躍にはちょっとついていけなった。

結局この作品、
都会に出ていて行き詰った女性が故郷の田舎町に戻って騒動を巻き起こし、そしてまた都会に帰っていく、というパターンのお話という印象。
割とよくあるログラインだ。

私の場合はそれ以上にアピールするところはあまりなかった。
いろんな仕掛けはそれなりにあり、それなりに面白いのだが。

異論のある人はいるだろうが、私の中では大きなくくりでは木下恵介監督の「カルメン故郷に帰る」みたいなもの、とか思ってしまった。

ただ、映像の色味、構図などは美しく、カット、シーンなどのつなぎにはセンスのよさを感じた。
ウィキによると、“彼は父の映画の編集室で多くの時を過ごし、プロセスを学んだ。”とあった。
こういったところで培ったものなのかもしれない。このあたりが2世ならではのメリットなのだろう。
退屈はしなかったし楽しく見れた映画だった。惹かれるものもあった。
ただ、見終わってから私には「結局、何なの?」的なものは残った。
ミニクーパーをへこませておしまいかよ、みたいな。

ジェィソンの監督作「JUNO/ジュノ」「マイ・レージ・マイ・ライフ」は会社の映画好きの人間も割と評価していた。
時間があればDVDで見てみたいと思う。