見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

恒川光太郎「金色の獣、彼方に向かう」

金色の獣、彼方に向かう

金色の獣、彼方に向かう

1年くらい前に、恒川光太郎の単行本6冊を続けて読んだ。
この作者の描く“世界”に魅了されたからだ。
そこまで続けざまに読みたいと思った作家は久しぶりだった。
そのくらい面白かった。

ただ、ストーリーとして落としどころに?の部分も感じた作品もあった。
(アマゾンに6冊のレビューをそれぞれ書いています)

この中編集は「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢に還る」「金色の獣、彼方に向かう」の4話構成。
「異神千夜」は90ページを超えるが、ほかは50〜70ページ程度。
連作中編というわけではないが、それぞれの作品には不思議な存在である“鼬”に絡んだモチーフが登場する。
ただ、そのモチーフを通してこの作品集全体で、何か統一したテーマが浮かびあがるという構成ではない。

久々に読んだこの中編集も面白かった。
平易な言葉遣いで簡潔に書かれているのだが、イメージ喚起力がすごい。
どんどん作品世界に入り込んでいった。

個人的には「異神千夜」が一番よかった。
鎌倉時代元寇の頃を舞台にした話だが、中盤まで意識は作品世界に没入していた。
ただ、終盤になり読む集中力がそがれてきた。
それが何によるものかを考えている。

恒川作品の読書間隔が開いてしまったため、今までの作品との比較がちょっとできなくて文章に書くことができない。
アマゾンだと、自分の書いたメモがすぐに見れない。
感想メモやはりこちらに書いたほうがまとめて参照できて便利だと改めて思った。
時間ができたところでアマゾンのテキストをこちらに移して、読み直してこの感想も更新することにする。

すごく面白い作家だと思うのだが、思ったほど売れていない気がする。
不思議だ。
魅力的な“世界”は描かれているが“人物間の葛藤”があまり書かれていないからなのだろうか?