見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

やなせたかし「やなせたかしのメルヘン絵本 [1]」

朝日小学生新聞に連載されていた、やなせ先生の「メルヘン絵本」を単行本にまとめたもの。
自分が作詞した詩をもとに創作したそうだ。載っている絵は1話につき1枚。

絵と文だけでなく装丁も担当しているので、この本すべてをやなせ先生が手がけていることになる。

それぞれの絵はカラフルでバラエティに富んでいる。90歳にしてこれだけの絵を描くのだから大したものだ。
海と空が背景にある絵が多い。
やなせ先生は“青”が好きなのかもしれないと思った。

そしてお話の中身である。
読んでみるとオチがない、ナンセンスものといっていいものもあったりで正直、バラツキがある。
きっちり構成して書いたというより、歌詞と絵から想像を広げるままにそのまま書いたお話という感じだ。

読んで気付いたのが、先生の書くお話においては“自己犠牲”“自分は滅びるが他者に命をつなぐ”“転生”というテーマがしばしば登場すること。
「南の風とタンポポ
「でくの棒」
「ゴリラの星」
「日かげの花」
「杉の木と野菊」
などがそうだ。
これらの話の中には読んでいて心打たれるものもあった。

いい年の私がこういうのも変だが、“愛らしい絵本”だと思う。

カバーの裏に
“「メルヘン絵本」のお話は、声に出して読んでみてね。お話の世界がぐ〜んと広がるよ。”
と書いてある。
この言葉、もちろん、やなせ先生が書いたのだろう。
私は、もちろん声に出して読んでいないので、ぐ〜んと広がるかどうかはわからなかった。

連載は好評だったとのことで、この絵本第2弾も出版されている。