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チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー『ライト・アズ・ア・フェザー』、ジム・ホール『アランフェス協奏曲』

チック・コリア名義からチック・コリアリターン・トゥ・フォーエヴァーとなってのアルバム。
実質リターン・トゥ・フォーエヴァーのセカンド・アルバムということになる。

メンバーはファーストと同じ。
チック・コリア ( エレクトリックピアノ)
ジョー・ファレル (サックス、フルート)
スタンリー・クラーク (ウッド・ベース、エレクトリックベース)
フローラ・プリム (ボーカル、パーカッション)
アイアート・モレイラ (ドラムス、パーカッション)
ファーストの録音と同じ'72年にロンドンで録音。
ECMから離れ、チックのプロデュースとなっている。

改めて聴いて思ったこと。
このアルバムはファーストの音世界を踏襲、より親しみやすくかつ、完成度の高いものとして仕上げたアルバムといえるのかもしれない。

ファーストにあった初々しさと北国の空気感、そしてどこか聴くものを不安にさせるような音の響きは「Children's Song」を除くとなくなっている。
オーソドックスなジャズ・ボーカルのアルバムともいえるのかもしれない。
(“ジャズ・ボーカルのアルバム”というものを意識して聴いたことがないのでよくわからないが、そんなイメージ)
聴いていて気持いいし、安定感は抜群だ。

個人的にはファーストに魅力を感じるが、あちらはちょっと癖がある。病みあがりみたいな。
こちらは癖もなく健康体。すんなりと誰でも聴けるはずだ。
聴きやすさ、無駄のない演奏という点からすると、こちら『ライト・アズ・ア・フェザー』が名盤ということになるのかもしれない。
このアルバムでの演奏は本当に素晴らしいと思う。
私の印象からすると、過不足のない演奏という感じだ。

ただ、この路線はこのアルバムで終了となり、チックとスタンリー・クラークのみが残り、
サード・アルバムではギターを導入してまったく違った音世界を展開している。
ここまでセカンドの出来がいいと、何作か続けてもいいものだと思うが、当時のチックは常軌を逸するほどイノベイティブだったのかもしれない。

作詞者については今回初めて意識したのだが、チックの友人であるサイエントロジーの信奉者のネヴィル・ポッターという詩人が手がけていたそうだ。ファーストも。
サイエントロジーというと、トム・クルーズが信じている変わった宗教という印象だが、米国版のライナーを書いた人は、作品とサイエントロジーの関係についてはあまり肯定的ニュアンスのことは書いていなかった。サイエントロジーについては知識がないので私にはなんともいえない。


ラストの曲「Spain」はホアキン・ロドリーゴ作の「アランフェス協奏曲」の有名なメロディーから始まる曲。
これを聴いてジム・ホールの「アランフェス交響曲」を久しぶりに聴きたくなり聴いてみた。
いやー、最高ですねこれ! 
ジム・ホールのバッキングやソロも素晴らしいが、スティーブ・ガッドロン・カーターのリズム隊。ローランド・ハナのピアノ、ポール・デズモンドのアルト・サックス、チェット・ベイカーのトランペット。クールかつ夢幻的といっていいような広がりのある音世界にしびれた。名演です。

アランフェス協奏曲

アランフェス協奏曲