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リターン・トゥ・フォーエヴァー『銀河の輝映』 

銀河の輝映

銀河の輝映

リターン・トゥ・フォーエヴァーの4作目。
’74年に録音。スタジオは前作『第7銀河への讃歌』と同様、ニューヨーク・レコード・プラント。

↓前作『第7銀河への讃歌』の感想メモ。
第7銀河の讃歌
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120611/1339433482

『第7銀河への讃歌』のメンバーからはギターのビル・コナーズが抜けた。
代わるギタリストとして、アール・クルーが一時加入したそうだが、このアルバムではアル・ディ・メオラが参加、以下のメンバー構成となる。

チック・コリア(キーボード)
スタンリー・クラーク(ベース)
レニー・ホワイト(ドラム)
アル・ディ・メオラ(ギター)

このメンバーの時代はバンドの黄金期といわれてるようだ。
以降『ノー・ミステリー』『浪漫の騎士』も同じメンバーで発表している。

第1期のアルバムでは歌詞を手掛け、チック・コリア及びメンバーをインスパイアし続けてきたと思われるサイエントロジーの詩人ネヴィル・ポッターは今回もクレジットに載っている。
アルバム・カバー・コンセプトというクレジットだ。
アルバム・ジャケットは、今回はイラストではなく写真。
真っ赤に染まった空の中で輝く恒星の写真となっている。

ジャケット裏には彼の詩が掲載されている。

以下の詩である。

Where have I known you before
Where did we play among galaxies bright
Laughing and dancing, creating each night
Deciding the course, to then venture on out
Love, you, space and I
Free from fear, free from doubt
Where have I known you before

Where have I loved you before
Was it just yesterday
Or millennia ago
I kissed, touched, held and needed you so
Your face is so different
Yet you, you’re you, just you
Still glowing and silvery bright
Wondrous dancingly bright
I knew you the moment you entered my room
That infinite eternal night
Where have I loved you before

Where have I hurt you before
Where did I hurt you so deep - so deep
To hear you say you knew me not
When you alone could save me there
And free me from that tyrant’s keep
Defender of the Vulcan worlds
Where filled my mind with blackened sleep

Where did I lose you before
Was it when you gave your life
To save that pharaoh king
Or when our golden mothership took flight
Far away from Saturn’s rings
Was it when we made the pact
Then drifted into violet space
So certain we would meet the other side
But there was no such place
Where did I lose you before

Where have I known you before
The moment I saw you I knew
I had found again the singer of a Thousand songs
That haunted every dream
The painter of the colors of my mind
Reminding me of places we had been
I’m seeing clearer now - the truth unfolds
The past all drifts away
You’re back again my dearest friend

You never went away

うまく訳せないので省くが、RTF第1期の歌詞のように、平易な言葉で書かれた抽象的な詩である。
とてもおおざっぱに言えば、こんなことを意味しているのではないだろうか。

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かつてあなた(仲間 庇護者 愛する人)と過ごした素晴らしい喜びの日々、
その別れと迷いの日々、そしてあなたとの再会、蘇る喜び

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興味ある人には読んでみることを薦める。難しい単語はないので、ニュアンスは分かりやすいと思う。

アルバム各曲のタイトルは以下のようになる。

1. ヴァルカン・ワールズ(Vulcan Worlds)
2. ホエア・ハヴ・アイ・ラヴド・ユー・ビフォア(Where Have I Loved You Before)
3. ザ・シャドウ・オブ・LO(The Shadow of Lo)
4. ホエア・ハヴ・アイ・ダンスト・ウィズ・ユー・ビフォア(Where Have I Danced with You Before)
5. 第7銀河の彼方(Beyond the Seventh Galaxy)
6. アース・ジュース(Earth Juice)
7. ホエア・ハヴ・アイ・ノウン・ユー・ビフォア(Where Have I Known You Before)
8. ソング・トゥ・ザ・ファロア・キングズ(Song to the Pharoah Kings)

上記の歌詞と対応している曲名だ。
ポッターの詩をコンセプトとするアルバムといえるのかもしれない。
ちなみに「バルカン・ワールズ」の“Vulcan”とはローマ神話で“火の神”を意味するようだ。ジャケットの写真とも呼応している。

以下、アルバムを何度も聴いて思ったこと。

初期衝動から洗練に向かう過程のアルバムと思える内容だった
そしてリズムが細かくなった。
象徴的なのがリズム隊。
特にスタンリー・クラークのベースプレイ。
前作のディストーションを効かせた“ファズベース”からスラップ奏法に変化してきている。
私などは子供のときには、スタンリー・クラーク=チョッパー奏法(当時はスラップでなくチョッパーと呼んだ)というイメージを持っていたが、このアルバムからそれらしいフレーズが次第に増えてきている。

ドラムのレニー・ホワイトも、ドシャドシャの前のめりビートから、細かくリズムを刻むファンク調に変化。このドラム奏者のことはマイルス・デイビス『ビッチズ・ビリュー』に参加していたことで知っていたが、特に意識していなかった。
こうして聴いてみると演奏の幅も広く、なかなか面白いプレイヤーだと思う。バンド第2期の初期にはスティーブ・ガッドがRTFに一時的に参加していたこともあったそうだが、スティーブ・ガッドだったら前作『第7銀河への讃歌』はあんなに破天荒な内容にはならなかったように思える。

当時20歳だったというアル・ディ・メオラのフィンガリング、ピッキングは恐るべきものだ。うまい。だが、まだ本領を発揮しているという感じではない。

少し聴いた次作『ノー・ミステリー』は比較的はじけた内容のようなので、このバンド第2期で最も洗練された完成版といえる作品は『浪漫の騎士』ということになるのかもしれない。

しかし聴いていて思うのだが、このバンド、プログレ、ジャズ・ロック、カンタベリー・ロックとの親和性が高い。
当時、RTFとロックの親和性について書いた記事を読んだ記憶はないが、今こうして聴くと、私はRTFに非常にロック的なものを感じる。
ジャズの雑誌は私は読まなかった(昔も今も)のだが、そっちでは書かれていたのだろうか。

追って『ノー・ミステリー』についても書く。