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平野嘉彦 「ボヘミアの〈儀式殺人〉 」

ボヘミアの〈儀式殺人〉

ボヘミアの〈儀式殺人〉

週刊文春立花隆の「私の読書日記」で興味を抱き読んでみた。
http://d.hatena.ne.jp/allenda48/20120425/1335376244
著者の平野嘉彦はカフカなどを研究するドイツ文学者。

アマゾンの商品説明はこんな文章。
内容紹介
ユダヤ人による儀式殺人伝説は13世紀に遡るが、近代のそれは国民国家の論理の帰結として復活した。事件へのユダヤ系知識人の多様な反応から、Judeであるとは何かを描く異色の思想史。
内容(「BOOK」データベースより)
中世から連綿と続く“儀式殺人”への誹謗は、啓蒙主義の潜伏期を経て、近代に復活する。事件にたいするユダヤ系知識人の多様な反応から、Judeであることの困難を描く異色の思想史。

面白そうな本だと思い読んでみることにした。

ここにある「儀式殺人」というのはユダヤ人が宗教上の目的でキリスト教徒を殺害、血を抜いて儀式に使うといわれていた説(デマ?)のこと。

この本では、その歴史についてはこのように書かれてある。
“ユダヤ人による〈儀式殺人〉の伝説は13世紀に遡る。それ以前にも、ユダヤ人がキリスト教徒を、主として子供や女性を、殺害するという伝説は、西ヨーロッパに流布していた。しかし、ユダヤ人が何の罪もないキリスト教徒を殺害して、その血を抜き取り、それを儀式ないし魔術的な目的に使うという表象が、はじめて明確な形で成立したのは、1235年のクリスマスに、ドイツのフルダでおこった事件においてであった。キリスト教一家の5人の子供たちが殺されて、ただちにその犯人として2人のユダヤ人が捕らわれ、おそらく拷問の結果だろうが、子供たちを殺害したばかりか、その血を抜き取って、蝋で目張りをした布袋にいれて運んだことを告白した。そして、12月28日に、フルダの市民たちが報復として、市内に住んでいた32人のユダヤ人たちを殺害するという事態に発展した”(P13)

で読んでみた感想。
正直ゴシップ的なものやカルト的(?)な面白みを求めて読んだ点もあったのだが、いまひとつピンとこなかった。

この本で扱っているのは、当時のオーストリア=ハンガリー帝国ボヘミアのポルナという町で起きた殺人事件。
若い女性が被害者となったこの事件が〈儀式殺人〉とされ、ユダヤ人の青年が容疑者となり裁判にかけられたことを扱っている。
そして、その事件を軸にカフカフロイトといった大ドイツ(この表現が的確かは確証ありません)内のユダヤ系知識人の精神構造に触れるといった趣旨となっている。

ただ、文章はこのボヘミアの殺人事件をこと細かに検証、何十ページにもわたり説明していく内容となっている。調書を読んでいる気分になった。
正直、このあたりでしんどくなり、飛ばし読みとなった。

ということで、いまひとつ趣旨がわからなかった。
読んだといえるものではないが、一応記録として残す。

〈儀式殺人〉というのは非常に怪しげな事件だし、小説的に、または陰謀論的に書けば一般読者の興味も引く内容だと思うのだが、そのあたりそういうことにはまったく配慮されて書かれたものではなかった。真面目な内容だが正直それほど面白いものではないというのが、“素人”の私の感想だ。