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アーシュラ・K・ル=グウィンの小説「さいはての島へ ゲド戦記3」

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)

ゲド戦記」6巻を一気に読んでから、ブログの感想メモが書けなくなった。
あまりに作品の世界が大きすぎてどうにも自分なりの感想が書けず、今だ途方にくれた感じがある。
週刊文春の記事の内容まで概略を書いていたのが魔法がかかったように書く気がなくなった。

本も読み、映画も見ているのだがさっぱり書く気になれない。

と言いながら記録に残さないと忘れてしまうので、うまくまとまる自信はないが書くことにする。書くことで考え、テキストとして“外”に出すことで対象化して記録に残すことを目的としてこのブログを始めたのだから。

岩波少年文庫のカバーにある略筋はこんな感じ。引用させてもらう。

ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。魔法の力が衰え、人々は無気力になり、死の訪れを待っているようだという。いったい何者のしわざか。ゲドと王子は敵を求めて旅立つが、その正体はわからない。ゲドは覚悟を決める。

岩波ブックレットNo.683の清水真砂子「『ゲド戦記』の世界」の表2にある略筋はこうなっている。引用させていただく。

大賢人ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。彼の国では魔法の力が衰え、人々は無気力になり、まるで国中が死の訪れを待っているようだと。アレン王子を連れたゲドは、見えない敵を求めて、さいはての地へおもむき、死力を尽くして戦う。

この第3巻は、王子アレンとゲドの大航海の冒険物語である。
世界の崩壊を防ぐべく、2人は見えない敵を求めてローク島から出発して遠く南の島を経て、西の果てにあるセリダーまで冒険を繰り広げる。
文体も第1作から比べると非常にカラフルで会話のやりとりも多い。
そして圧倒的な存在感で登場する竜の描写はしびれるような素晴らしさだ。この作品で竜の存在が物語の前面に登場、これ以降の作品で大きな位置を占めてくる。

全身全霊、すべての持てる魔法の力を出し尽くしたゲド、そしてアレンが最古の竜カレシンの背に乗って西の果ての島から飛び立ち、ローク島に戻ったアレンが王としてゲドから認められる場面は、まさに大団円である。

第1作「影との戦い」の物語の前にこの言葉がある。

ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに「エアの創造」

ゲド戦記前半3作は、この言葉を物語で構築した傑作ファンタジーだ。

だが、この後の3作品でル=グウィンは新たな視点からアースシーの物語を紡いでいく。
ゲド戦記」のすごいところは、この後半3作があるからだと思う。

ともあれ、この全3作の最終巻である第3巻は、一般的な冒険ファンタジー的として、読み応えはシリーズで最もある作品だ。
そしてここまでの3巻でいわゆるヒロイックファンタジーとしての“ゲド戦記”はひとまず完結する。

ちなみにアニメの「ゲド戦記」はこの第3巻をメインの原作とし、宮崎駿絵物語シュナの旅」を原案としたようだ。

シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))

シュナの旅 (アニメージュ文庫 (B‐001))