二ノ宮知子の漫画「のだめカンカービレ」全25巻
音楽をネタにした漫画ということで以前から気になっていた。
冬休みの時間を使い、やっと読むことができた。
作者の漫画は今までに読んだことはない。
ドラマはちゃんと見ていない。映画は見ていない。アニメはまったく見ていない。
前情報なしで読み通した。
25巻を続けて読んでいて、途中で作品(もしくは私の)テンションが落ちて若干読み進める意欲がなくなってきたところもあったが、全体としては楽しく読め、ハッとするシーンもいくつもあった。いい漫画だったと思う。
20巻あたりから、この話はどんな着地点でどういう風に終るのだろうと思いながら読んでいた。
すると23巻の終わりが"紆余曲折を経ての一人の女性音楽家の誕生"というシーンになっていた。
なんでまだ2巻あるのにこれで終わり?と腑に落ちないものを感じた。
さらに24・25巻の日本編の最後が物語全体のフィナーレとしてはあまりに収束感がなかったので非常に違和感を覚えた。
だが、あとでウィキペディアを見て、本編が23巻で終わり、24・25巻は番外編的なものであると知りなるほどと納得した。
目次を見たら23巻の最後の表題は「The Last Lesson」になっていた。
表紙についても24・25巻は、のだめ単体でなく千秋と共に描かれている。
そしてその前の本編である23巻分の表紙では、ピアニストであるのだめが、さまざまな楽器を弾く姿が描かれている。
そして実質最終巻の23巻でピアノを前にした絵となっている。
名作、傑作ではないと思うが、描き続けることでひとつの世界を描ききることができた良作だと思う(偉そうですみません)。
23巻で終わりであれば、なかなかさわやかな終り方だ。最後のシーン、カットはよかった。
最終話「The Last Lesson」でのひとりの音楽家の誕生に至るまでの「主人公の成長を描く物語」
という点からすると大げさに言えばビルディングス・ロマン(教養小説)といえなくもない。
そして違和感のあった24・25巻ものだめと千秋の関係のゴールを描いたということで読めば、物語の重要なテーマにけりをつけた作品とも言える。
以下、印象に残った点を書き連ねる。
◆クラシック音楽の世界に生きる人々の群像劇であり、"それぞれの青春の岐路"を描いた作品だが、思い入れたっぷりでなく淡々と日々の音楽とともにある生活を描いていることが印象的だった。
同じクラシックネタでも感情移入が過多な「四月は君の嘘」より私は好感をもった。
まあ、あっちは中坊だからしょうがない気もするが。
◆主人公・千秋の父親が魅力のない人物として描かれているのに驚いた。かなり嫌な感じの奴だ。あまりこういうキャラクターを見たことはない気がする。ずっと登場せずに物語の後半で登場しておきながら、あまり見せ場を作っていない。
◆コミカルなシーンになると業田良家タッチの画になることがある。あれは何だったのだろう?
◆千秋のとのだめが結ばれたのがいつなのか今ひとつはっきりしなかった。明らかにセックスをしたというシーンは一つあったが、初めてという描写ではなかった(ような気がする)。男女がいつ初めて結ばれたかということは物語上でのクライマックスなのだが、それがいまひとつはっきりしていないというのもなかなかすごい漫画だと思う。ただ、通読した際に私が読み取りそこねた可能性もある。
◆のだめの感情の動きが今ひとつはっきりと誰にでもわかるように描かれていないところがある気がした。これは作者が狙ったことなのか、それとも描写での説明が不足しているのか、私の漫画読解力が不足しているのか……今ひとつわからないが、腑に落ちない点がいくつかあった。