皆川亮二の漫画「D-LIVE ドライブ」
「PEACE MAKER」を読んで気に入ったので、作者の皆川亮二の作品を都合がつくときに読んできた。今回は「ARMS」「ADAMAS」に続く4作目となる。
主人公は17歳ながらすべての乗り物を完璧に乗りこなすことのできる天才ドライバー。
その主人公が国際的派遣業会社のスタッフとして、さまざまなミッションに挑むという話だ。
各エピソードで主人公が陸・海・空の多種多様な乗り物を駆使して問題を解決するというのが今回の趣向となっている。
主人公がマシンに乗り込んだ際の「お前に命を吹き込んでやる」が決めゼリフ。
今まで読んだ中で一番シンプルな構成の物語で、凝った設定がない分、皆川という漫画家の資質がわかる作品だった。
登場するさまざまなマシンとそのマシンを主人公が駆使するアクションシーンの絵、コマ割りはなかなかの見ものだ。
マシンやアクションシーンの絵を描くことが好きなのだと実感した。
「ARMS」のエンドロール的なエンディングのように、映画の絵コンテ的なコマ割りもあり、作者が映画好きであることもうかがえる。
各エピソードタイトルも過去の映画のタイトルから取ってきている。
作者は映画好きで、さらにアクション映画における"絵"が好きなのかもしれない。
今までの作品で気になっていたあまり得手と思えなかった顔の造作、表情だが、今回はあまり気にならなかった。
多分その理由は、この作品が乗り物アクションだからだ。
人間ドラマ、サスペンスとなると登場人物の表情が気になるが、この作品は人間関係はシンプルな乗り物アクションなので、そのあたりの描写が少ないのだ。物語はアクションの連鎖で進んでいく。
やはりこの漫画家は人の顔を描くことにあまり興味がないのかもしれないと思った。
この漫画家がどう評価されているのかとネットを見たら“皆川劇場”“劇団皆川座”などと書かれていたりした。
まさにその通りの作家だ。
劇団皆川座で、今回は「どんな世界で」「どんな趣向で」「どんな配役で」と考えて物語を紡いでいるように思える。
読んでいると、あれ、この設定、このキャラクター、前にあったな、と思わせることが多々ある。
だが、それが劇団皆川座のオモシロさでもある。
そして、これって江戸時代の劇作家にも通じるもののような気がする。
当時の座付きの劇作家は、公演日程に合わせて限られた条件の中で劇の世界を決め、趣向を決めて物語を構成していったというようなことを読んだ記憶がある(未確認)。
この漫画家の作品はそんなものを感じさせる。
第三者に原案、脚本で参加してもらっていることが多いことも、共作の多かった江戸時代の劇作家を連想させる。
以下、この漫画についての感想。
短いエピソードは、この作家としてはさほど面白く感じられなかった。
面白かったエピソードは1巻分のボリュームになる「ナチスドイツの遺産」「マン島レース」編だった。
14巻を通読した際も、4巻くらいまではさほど面白くなく、役者がそろい世界設定が見えてきたところで徐々に面白くなってきた感じだった。
クライマックスでの主人公の徹底的な敗北、無力化、そこから復活しての勝利は「ADAMAS」と同じパターンだった。
このパターンは作者はどこから学んだのだろうか?
映画なら「用心棒」「許されざる者」「スターウォーズ」(劇場公開第1作)などなどである、主人公の徹底的な敗北、そこから復活しての勝利というパターンだ。
クリストファー・ボグラーの本などを読んだのだろうか?