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伊坂幸太郎の小説「ガソリン生活」

 

ガソリン生活 (朝日文庫)

ガソリン生活 (朝日文庫)

 

 気軽に読んでいい気分になれる、伊坂幸太郎の本領発揮!の作品

伊坂幸太郎の小説には寓話めいた荒唐無稽な設定の作品が少なからずあるが、今回読んだ「ガソリン生活」は、その流れの中にある作品だった。
車が意思を持ち、車同士で会話をするという設定のもと、緑色のマツダ・デミオが主人公の物語だ。

例によって、何の前情報もなく読み始めた。
まったくそそることのないタイトルだったが、思っていた以上に楽しく読むことができた。

伊坂幸太郎の作品にはどこか"人の良さ"みたいなものが感じられ、そこが読んでいて心地よいのだが、
今作は"人の良さ"指数では、今まで読んだ彼の作品のなかでもトップクラスだと思う。

ストレスなく読め、物語の展開に引き込まれ、読み終わったあと、ちょっといい気分になる。
私の思っている伊坂作品の魅力を存分に楽しむことができる小説だった。

著者の名前を意識したことがなかったが、この作品を読んで、
著者名が“幸せ”“太郎”と名乗るにふさわしい、読んで幸せな気分になれる小説だった。

プロット的には、この物語の軸となる、女性の行動理由については正直、解せないところもあるのだが、
あまり突っ込んでもしょうがない話だと思う。

各章は
・Low
・Drive
・Parking
の3幕構成。
それにエピローグを加えた造りとなっているのだが、
この短いエピローグがなかなかいい感じに仕上がっている。

とてもいい気分で読み終えることができた。

しいて言えば、物語の収束をするParking部分がもっとコンパクトになっていればというのが、読んでいて気になったくらいだろうか。

 

とはいえ、とても楽しく読むことができた。

 

伊坂幸太郎の代表作では決してないと思う。

だが、この作家の良いところが良い形で出ている好作だと思う。
ディズニーのアニメのように万人に進められる作品だ。

 

あまり多くを語るべき作品でもないので、以上とする。